イニシエーション(initiation、入会儀式)という概念が存在します。このイニシエーション、日本にはあまりない文化ですが、スパンキングが関わってくることがとても多く、見逃せないトピックです。
今回は全3回の1回目、デムーリン・ブラザーズの販売したお仕置き道具について見ていきましょう。

みなさん、こんばんは。今回の連載特集は、インプリ担当のわたくし七峰と、



海外担当、令和のスパンコロジスト吉川でお送りしましょう



あんた、ちゃんとサボらず説明しなさいよ。私はわかんないんだから



なんで二言目で逆切れ!?
デムーリン・ブラザーズ関連の日本語書籍が出たので先にご紹介
さて、この特集にたどり着くまで、若干の経緯がございまして…… 今年に入ってから、「スパンキング白書エディトリアル」の方で「少女とお仕置きの相関係数」というネタを書いていました。


そして、そこでイニシエーションを入れようと思っていたちょうどその時、まさかのデムーリン・ブラザーズに関する日本語書籍が発売されたのです。ナイスタイミング。
デムーリン・ブラザーズの華麗なる秘密結社グッズカタログ
ジュリア・スーツ著 宇佐和通訳(ヒカルランド)





「デムーリン・ブラザーズ」は、20世紀の初めに、ヘンテコなからくり装置をカタログ通販していた服飾屋さんです。今もあります
デムーリン・ブラザーズの販売していたスパンキング・マシーンのイラストは、(ここに来るような人は)どこかで見たことあるかも。リアルスパンキングマシンメーカーとしては並ぶものがいないメジャーブランドです



こんなやつですね


というわけで、もともと考えてていたイニシエーションのネタを若干プラン変更して、デムーリン・ブラザーズの紹介から入っていこうかと思います。デムーリンは面白いので、その方がとっつきやすいはず。イニシエーションそのものに関しては、次回掘り下げます。
さて、この『デムーリン・ブラザーズの華麗なる秘密結社グッズカタログ』は、デムーリン・ブラザーズが通信販売していた謎グッズを色々と紹介している本です。その中にはいくつかのスパンキング・グッズを含みます。カタログの商品はいくつか後ほど紹介します。



あと、こんな記述が……
デムーリン・ブラザーズ・カンパニー社のカタログでは、お尻の叩く部分を「ママがスリッパの底を当てた場所」と形容されていた。「slippering=スリッパを使う」という表現もまた、お尻を叩くという意味だ。
『デムーリン・ブラザーズの華麗なる秘密結社グッズカタログ』p.161



スリッパリングが日本語で説明されている! 感動! 生きててよかった!
スリッパリングに関してはこちら。


しかしながら、



税込み 3,630円 …… なかなかの値段……
専門書(研究者が書いてて、専門分野の訳者さんが訳または監修付き)ではなく、ただのネタ・娯楽本なので…… 原作者は、漫画家さんらしいです。スパ関係の記述だけを取っても、原書、翻訳共に内容が若干怪しいものもあるので、スパ文化資料ではなく、暇つぶしのノリで楽しむ、くらいがベターです。
ただ、当サイトとして、ちょっと残念な誤訳が1つ。
(スコットランドにあるお祭りで)“背中に「私を蹴って」と書かれた紙を貼るいたずら“(p.73)という文章があるのですが、紙を貼るのは背中ではなく「尻」です。原文の「posterior(尻)」という英単語を翻訳者は「背中」と勘違いしたらしい。
(ちなみに、この「蹴って」と言っている「私」とは、もちろんお尻さんです。めっちゃ楽しそう。というか背中じゃ飛び蹴りしないとならない)
そして、そこを間違えたせいで、直後に出てくる spanking の辻褄が合わなくなったため、「prank spanking(いたずら尻叩き) 」を「この手のいたずら」、「spanking device(尻叩き道具)」を「叩き道具」、と尻を除外することで、何とかごまかしている様子。spanking という単語は1%くらい尻以外の可能性はありますが、残念ながらここで筆者が意図しているのは、普通に尻叩きです。
こうして、また一つスパ情報が消失していく。虚しい……
とはいえ、やはり日本語書籍でデムーリンのカタログが楽しめるのは、唯一無二の楽しさがあります。ではデムーリン・ブラザーズがスパンキング・マシンを販売していた相手は誰か。それは……
秘密結社です。



なんか、実は……ババーン!みたいな書き方したけど、上の本の書名でネタバレしてるのでは



うっさい! スリッパを食らわすぞっ
というわけで、書籍紹介はここまで。そもそも元ネタのカタログが100年以上前のものなので、そちらを直接見たほうが大人の事情的に都合がよさそうですね。というわけで…… どうぞ。
秘密結社が切実な思いでおしりペンペンマシンを通販で買う、奇怪な20世紀初頭のアメリカという国
イニシエーションとは、主に、何らかの閉鎖的な団体に入る際の(特に、新規入会者が受ける)儀式のことを指します。何らかの閉鎖的な団体、というのは、つまり秘密結社です。



ちょっと突っ込んだ話をします
今回お話しする団体というのは、いわゆる「フラタニティ(友愛団体)」などと呼ばれる組織です。これは中世のギルドが起源ともされるクラブであり、フリーメイソンなんかもこの「フラタニティ」の一つです。



あれ、秘密結社とは違うの?



まあ、秘密結社とも呼ばれるけど、フリーメイソンを広辞苑で引くと、ちゃんと「慈善・親睦団体」って書かれてますね。秘密結社というのは、もっと広い意味では、存在が秘密であるレジスタンスや非合法活動組織も入ったりするだろうし
一方で、フラタニティは存在が秘密なわけではない。もちろん、外部には公開しない秘密の活動もあるわけですが……



結社の社外秘、ということですね。まあ、それはどこの団体でもあるわな



ただ、言葉の通りの良さとノリを重視して、今回は一律「秘密結社」という言葉を使います。ただ、わかりやすくなんらかの活動テーマを持った社会人サークルと捉えてもらえればよいかと思います
さて、アメリカでは19世紀から20世紀にかけて、多くの秘密結社が存在していました。しかし、社会が発展するにつれ、人々は忙しくなり、また様々な娯楽も増えていきます。秘密結社の加入者は減る一方。人が入らないと活動資金の会費が集まらず、結社が潰れてしまう。



まあ、本来は慈善団体だから、金は出ていくだけですよね
各々の秘密結社は、入会候補者の選考、及び内定者の入会式で、一種の儀式、つまりイニシエーションを行っていました。
儀式と言っても、必ずしも地下礼拝堂で白装束を着て蝋燭を持ち、へんな呪文を唱えてヤギの血を飲み干すような儀式とは限りません。金のあるトップ結社のフリーメイソン先生ならまだしも、「なんとか秘密結社なんとか村支部」レベルじゃ、そんなことより酒飲んで騒ぎたいものです。
というわけで、秘密結社は色々な娯楽要素を取り込み、活性化と人集めを図ります。とはいえ年がら年中遊んでばっかりもいられない。そこで恰好のお楽しみイベントとなったのが、新歓コンパ、もといイニシエーションだったのです。



デムーリン・ブラザーズは、あちこちの秘密結社に「儀式用パーティーグッズ」を満載したカタログを送付て、飛躍していくことになります。その中には特許を取得したものも



んじゃあ、さっそく製品を色々見ていきましょうか。当時のカタログの掲載イラストも一緒にご紹介します
【製品】スパンカー


単純明快なネーミングです。お尻叩き器です。安価でかつ分かりやすく、盛り上がるため、デムーリン・ブラザーズのベストセラーの一つとなりました。
仕組みは単純で、二枚のパドルが合わさったような形をしており、その間に空包、つまり火薬のクラッカーが仕込まれています。このスパンカーを新人のお尻に叩きつけた瞬間、派手な音を立てるわけです。空包は本体購入時に50発分が同梱。追加購入も可能です。叩き放題ですね。



バラエティ番組のギャグみたい、と思うかもしれませんが、インプリにおいて、「音」というのは一つの重要な要素です
例えば、スペンサーパドルの「穴」は、一説には必要以上に音を出すためにあるとも言われます。また、お仕置き前にクロップを空中で振ってひゅんっと音を出すのは、おきまりのモーションですね
これも全て、キーに対して恐怖の感情を引き起こす「演出」なわけです



まあ、この製品に関しては、バラエティ番組のギャグでしょう。地上波NGレベルの
【製品】ストライキング・モール


モールというのは木槌のことです。イラストがピコピコハンマーっぽいですが、大工さんが使っているようなやつです。木槌でお尻を叩くって危ないな、とは思いますが、実際は軽いので危なくないとのこと。いえ、「当時の基準で」危なくないだけです。これもスパンカー同様、中に空包が仕込まれていて、大きな音を立てます。



ちょっとおじさん、お股をちゃんと閉じて防御しないと、あんた死ぬわよ



ストライク、スパンキーアウト!
【製品】スパンキング・シャベル


カタログ番号も若く、デムーリンの販売したスパンカーのうち、かなり初期のものと思われます。商品説明をみると
Our Spanking Shovel is preferred by many to the ordinary spanker, as it create a more startling effect upon the candidate.
Catalog for Modern Woodmen of America
(多くの方が、普通のスパンカーより弊社のスパンキングシャベルをお気に召されます。なぜなら、候補者をよりびっくりさせる効果があるからです。)
と、火薬の破裂を前面に押していることから、これが成功して、これをベースに上の(火薬を機構内部に入れることで安全性を増した)スパンカーやストライキング・モールを開発したのかな、と思います。
あと、競合品があるような書き方がされていますね。パドル業界も大変そうです。



ちなみに、普通に金属製らしい



鉄シャベルでケツしばかれるとか、もはや音でびっくり!とかじゃなくない?
【製品】改良型リフティング・アンド・スパンキングマシン


取っ手を上に引き上げると、後ろについているパドルが飛び上がり、お尻を叩かれます。もう、見たまんまじゃないですか。なんだ。



デムーリンの製品はそんな生易しいものじゃないですよ
カタログの製品紹介をどうぞ。結構面白いので、全部載っけます。
自分のはいているズボンに自分自身で蹴りを入れることはできません。しかしこのマシンを使えば、候補者は腕力テストをするだけで、自分のズボンの、お母さんにスリッパの底で叩かれた部分を叩くことが可能となるのです。候補者が取る体勢は、ズボンのお尻の部分をぴんと張らなくてはいけませんが、ハンドルを持ち上げる際に、ズボンのたるみは勝手に引っ張られるので、この体勢を取ることに反対されはしないでしょう。彼がハンドルをしっかり引き上げ始めるくらいに、自動的にトリガーがかかり、スパンキングパドルが跳ね戻って、お尻を打ちます。それと同時に、32口径の空包が大きな破裂音を上げます。それだけではありません。さらにぜんまい仕掛けの電気モーターがマシンの土台内部に隠されており、パドルがズボンを打つと同時に、強い電流が出力されるようになっています。その感覚は、説明するまでもなく想像できるでしょう。
このマシンの電装部分は更なる改良が行われました。今回は故障しやすいドライバッテリーの代わりに、ぜんまい式マグネト発電機を使用しています。どのマシンも強力な電流が流れる保証付きで、故障することはありません。
(マシンの梱包時の重量は55ポンド)
マシンは少しのスペースしか使いません。ハンドルとパドルは簡単に取り外せるので、22 x 34 x 5.5 インチの箱にも収まります。
Catalog for Modern Woodmen of America
※上のイラストの通り、電気が流れるのはパドルじゃなくてハンドルです。残念。



こ、こいつら…… バカだ……!
使用時のシナリオや、長期間の愛顧、収納性まで考慮してスパンキングマシンの企画設計してやがる……!
WorthPointというアンティーク品の実売価格をまとめるサイトに、実物の写真がいくつか載っていますが、アップの写真を見るとパドルの間に撃鉄のようなものがあるのがわかります。


なんか、出品者によるとぜんまいの巻き具合でビリビリレベルが変えられるらしい……
しかし、この機能てんこ盛りのハイブリットおしりペンペンマシンにも欠点があります。



サプライズマシンのくせに、パドル丸見えじゃん! ハンドルを引き上げてみてください、とか言われても、どうみてもお尻叩かれるじゃん!



だからカタログのイラストのキーさんは目隠しをされていますね。とはいえ、やはり目隠しされていると、何かドッキリの仕掛けがあることが予想されてしまうので、完全解決というわけではないですね……
だが、デムーリン・ブラザーズは諦めない! さらに新しいスパンキングマシンを開発します。それが……
【製品】インビジブル・パドルマシン





invisible は「目に見えない」という意味です
・この細菌は、小さすぎて肉眼では invisible
・この裏金は、帳簿に記載されないので invisible
という感じで使います
ではこのスパンキングマシンのパドルはなぜ「見えないパドル」なのか。それは、隠されているからです。
カタログのイラストを見ると、ひとつ前の「リフティング・アンド・スパンキングマシン」と同じように、両手で引き上げるハンドルがありますね。そして、顔の部分に水がかかっています。また、お尻に向かって、板も跳ね上げられています。



顔とお尻の両責めですか
このマシンの本質は、そこにあります。
今回はパドルそのものは装置の天板として、巧妙に隠されています。カタログの紹介文もバレないと言い切っています。しかし、ハンドルを引き上げろと言われたら、何かが起こるだろうと構えられてしまいます。それじゃあ儀式が面白くない。
だから、明らかに何か吹き出しそうな怪しい穴を、顔のところに開けてあるのです。しかし、そっちはおとり。悪質過ぎる。
ターゲットが「おっ、穴が開いてある。顔に水かなんか吹き出すかも」と顔に注意して、ハンドルを引く。すると、後ろの板が跳ね上がって、油断しているお尻に叩きつけられるわけです。



なお、顔は顔で、ちゃんと水がぶっかけられるもよう



もちろん、いつもの空包の爆発演出機能もついてきますよ。デムーリン・スパマシンシリーズの標準搭載機能ですので!
例によって、本体ご購入の方に、空包50パック同梱サービスらしい
カタログを見てみると、本製品は本体が $21(当時の価格)なのですが、$12.5 追加するとオプションで「リフティング・アンド・スパンキングマシン」のビリビリ機能が付けられると書いてあります。発電機と水噴射機をセットで箱に入れるということでしょうか? 命かけてますね。
(実際、デムーリン・ブラザーズ製品での死傷、及びそれによる訴訟例は、かなりあります)
【製品】その他のお尻ビリビリグッズたち
今ではおもちゃといえども電気で動くのは当たり前。しかし、当時は電気を使ったいたずらアイディアは、とても目新しい面白さがありました。最後にまとめて、電気でお尻を攻撃するグッズをいくつか紹介しましょう。
電気ベンチ


ビリビリ椅子ならぬ、ビリビリベンチです。カタログによると「寄付をしてくださる方はご起立下さい」と言った直後に電流を流すとよいそうです。



製品説明ライターさんもノリノリですね
電気シーソー


シーソーに腰を固定するベルトに電気が走るようになっており、足が床に着くとつくとそのスイッチが入ります。お尻にビリっと電気が走ると、その人は慌てて飛び上がるので、もう片方の人が床に叩きつけられて、またビリっとします。そうやって、ぎったんばったんし続けるわけです。
すごい、2人への同時お仕置きのアイディアとして秀逸過ぎる!
これ、アニメーションを作ってみたいところです。ちょっと検討します。
人間ムカデあるいは悪夢





ひどいセンスだ! 賞賛を送りたい!
この変な生き物は、先頭の一人がコントロール役です。いっちに、いっちに、とムカデ競争のように歩く…… わけではもちろんありません。
先頭の人がスイッチを入れると、他の3人のお尻に電気ショックがビリビリ流れます。ビリビリ面とお尻はショルダーバンドで密着させられており、もう6本の脚はバタバタするしかない。さあ、頑張って歩いてもらわないと、目的の方向へ行けません。



いやあ、色々見てみましたが、やっぱり面白いですね



よし、折角なんで、このインビジブル・パドルマシンを、かえでに試すドッキリ企画だ!
……
~準備中~
……



……えっと、こんな感じで、箱にまたがればいいですか?



そうそう。じゃあ、筋力測定をするので、両手でその2つの取っ手を引っ張ってください



あ~ 顔の近くの穴は、絶対、絶対気にしないでね~



……多分私この後、お尻を叩かれますよね



なんでバレた!



貴様エスパーか!



あんたらが、またがる前に、スカートとパンツ脱がしやがったんでしょうが!
デムーリン・ミュージアムの公式サイト(英語)
スパンキング・マシンの写真や動画が見られます。流石に火薬は使っていませんが。



