イニシエーションについての特集2回目。今回は大学の新入生に対する尻叩きと、プレッジパドルについて見ていきます。
海外映画、ドラマ、アニメ等のスパンキングシーンの理解の助けになればと思い取り上げていますが、今日では基本的に問題とされ各団体で禁止が明文化されているような慣習であること、ご留意の上お進みください。

さて、前回はフラタニティを秘密結社として扱いました。しかし、現在フラタニティというと、一般的に大学の社交クラブのようなものをさします。男子学生のみ、もしくは男女の組織をフラタニティと言う一方、女子学生のみのフラタニティを特に「ソロリティ」と呼びます。よくわからなければ、仮に大学サークルだと思ってください。

フラタニティ:男子 (or 男女)
ソロリティ:女子
ですね。今回は基本アメリカの話です。
この大学のフラタニティやソロリティもイニシエーション(入会儀式)があるわけで、かつては伝統的な「新入生しごき」の場として使われていました。フラタニティやソロリティにとって、スパンキング、主にパドリングはお決まりの通過儀礼メニューだったわけです。
フラタニティとパドルの強い結びつき
映画『アニマル・ハウス』(1978)では、大学で最も格式高いフラタニティ「オメガ・ハウス」のイニシエーションが出てきます。
National Lampoon’s Animal House (1978)
なんか秘密結社っぽい本格的な雰囲気ですね。そこで、新入生がブリーフ一丁で、パドルで(結構強く)尻を何度も打たれます。



およ。後ろにオメガ(Ω)の文字が入った祭壇みたいのがありますね。儀礼用の部屋があるということは、やはり学内でも権威や歴史、そしてマネーがあるフラタニティなのでしょうか



フラタニティは上の「オメガ・ハウス」のように、名前にギリシャ文字を使用することが多いです。だから、フラタニティのパドルは、団体のギリシャ文字が刻まれてることがよくあります





このようなパドルをプレッジパドル(Pledge Paddle, 誓約パドル)と言います。オーダーメイドで発注できたりします





pledge プレッジというのは「誓約」という意味で、フラタニティ、ソロリティに関しては「入会誓約者」という意味でも使いますね



プレッジ・パドルは、正式入会後、妹から姉に対して、メッセージを書いて渡したり、寄せ書きをして贈ったりします。色紙みたいなっているパドルもあったり
ここで、話を『アニマル・ハウス』に戻しましょう。上記の「オメガ・ハウス」は運動部部長など、学内の有力学生が揃うハイクラスなフラタニティです。しかし主人公たちは、このオメガ・ハウスに門前払いをくらい、問題ばかり起こす「デルタ・ハウス」という底辺フラタニティに入会することになります。
デルタ・ハウスでも同様にイニシエーションがあります。しかし、その内容は、普通の部屋に皆で集まり、変な被り物をかぶった上級生に、「お前の名前は……ヒラメだ!」みたいに適当な名前を付けられ、最後に一斉にビールをぶっかけられる、というものです。
まあ、こっちの方が楽しそうですが。



底辺フラタニティは、イニシエーションといいつつ酒で騒いでいるだけ。一方で、上級フラタニティは、パドリングを儀式としてやっているわけですね
イニシエーションのパドリングがどんなものか、ちょっと感覚がわかるのではないでしょうか。面白いですね
ヘルウィーク ~ 新入生の地獄の週 ~
さて、イニシエーションを含めたプレッジ(入会希望者)へのしごきを ヘイジング(hazing)と呼びます。そして、新入生が入ったばかりで、上級生からしごかれまくる期間は、通称「ヘルウィーク Hell Week」すなわち「地獄の週」と呼ばれます。
とりあえず、Wikipedia に載っている、ヘルウィークにおけるヘイジングの例を書き並べてみます。
- 睡眠妨害
- 目や耳などの知覚を奪う
- パドリングやその他のスパンキング
- 無理な体勢をさせる
- 強制ランニング
- 意味のない仕事
- 強制飲み
- 心理攻撃
- 焼き印
- 浣腸
- 排尿
- 腐った食べ物の摂取



焼き印ってなんじゃい



まあ一般的な例ではないでしょ。アメリカ人もドン引きだと思う……
『21 Jump Street』(リメイク映画ではなく、旧ドラマシリーズ)に「ヘルウィーク」という回があります。ここで新入生たちがヘイジングに合っています



あ、スパンキーが若き頃のジョニー・デップだ



フラタニティの兄弟についての暗記事項を間違えて叩かれています
このプレッジパドルは、お尻叩きが終わった後暖炉に入れて燃やされていますね。作ったパドルで尻を叩かれることで未熟さや悪い心がパドルに移り、それを燃やして焼き払っている、とのご説明
ヘルウィークが終わると、上級生もニコニコでウェルカムな感じです



なんか罰として生卵を飲めといわれてるシーンがあるんだけど……



めっちゃうまい生卵は醤油もいらんよね。日本に住んでてよかった
『陰謀論のオシゴト』(原題 “Inside Job”, 2021, Nextflix)というアニメがあります。
陰謀を裏で操作する会社の社員のブレットは、母校イェール大学のパーティーで、学生時代に入れなかった秘密のフラタニティに入るため、ヘイジングをしてくれと自分で頼みます。
『陰謀論のオシゴト』(2021) EP3



これもやっぱりギリシャ文字のパドルですね
このブレットがコミュ力おばけで、第1話でホワイトハウスに潜入する際、廊下でシークレットサービス遭遇するたびに、彼らのフラタニティ特有の挨拶をとっかえひっかえしていき、知り合い感を出して警備を突破するという謎スキルを発揮します。主人公レーガンになんでそんなに色々なフラタニティの挨拶を知っているんだ、と聞かれたブレットの答えは、
“I pledged every frat. I had 38 hell weeks.”
(全部のフラタニティに仮入会したんだ。ヘル・ウィークが38週あった)
『陰謀論のオシゴト』(2021) EP1



長期休暇除いたら、丸一年じゃん。ヘルイヤー
まあ、これはコメディですが、2021年においても、ヘルウィークというネタは健在なわけです。
『陰謀論のオシゴト』は、一話目で主人公のレーガン(F)がお尻をひっぱたかれていたので、そのままつい全部見てしまっただけなのですが、普通に面白いのでお勧めです。
で、ソロリティは?
では、女子学生クラブ「ソロリティ」に関してはどうでしょうか。まあ、ご想像の通り、男子学生のみのクラブに比べたら肉体的なヘイジングは少ない。とはいえ皆無ではなく、昔のニュース記事で、ソロリティでの尻叩きで怪我をさせて停学とか、活動停止とか引っかかります。



一連の不祥事には暴力沙汰も含まれていたらしいし
くらいは覚悟しないと



あ、なぜかそこだけゴシックでサイズが大きくなる台詞ではないか



話を戻しなさい
まあ、そういう類の事例はともかく、キーワードは
pledge paddle, sorority
あたりでしょうか。いえ別に何用のキーワードとは特に言いませんが……
一方、フィクションにおいて、ソロリティのイニシエーションのパドリングとしては(本業界で)一番有名なのは、恐らくこれじゃないでしょうか。邦題も日本語版もないのですが、そのスパンキングシーンは、なぜか見たことあるのではないかと思います。
『Sorority Babes in the Slimeball Bowl-O-Rama』
ソロリティ ベイブス イン ザ スライムボール ボウル-オ-ラマ





映画のポスターに、パドルが描かれてる!
B級ホラーエロコメディです(多分)。もし知らなかったら、ぜひ Check it out です。3人のオタクっぽい男子学生が、ソロリティのイニシエーションを覗き見する、というなんかエロゲみたいなシチュなので、人によってはクリーンヒットかとと思います。
内容は「猿の手」という願いをかなえる猿の手のミイラの小説をベースにしたホラーですが、スパとその後のシャワーシーン以外は正直どうでもいいです。
作中のイニシエーションでは、ソロリティのお姉さま方は、秘密結社っぽい黒ローブを着ていますね。逆に、プレッジの女子2人は、下着姿で赤ちゃんっぽい恰好をさせられています。



「赤ちゃん」「ソロリティ」「パドリング」と言えば…… あれがあるじゃないですか! わかりますでしょうか
次回へ続く!

