


― 夜のパリ。
― ムーラン・ルージュ。
― フランシス、フレンチ・カンカンにはまる。
― タブロー・ヴィヴァン、再び。
― 女通しのセックス。
― レズビアンの回想。
― 覗き穴の向こう側。
― フレンチ・キス。
― 発覚。
― 不誠実なホテルのメイド。
― アネット、フランシスにお仕置きされる。
― きついストラッピング。
― 逆鱗にはふれない。
これまで話した通りのちょっとした出来事のあと、僕たちはさらに2週間、ニースに滞在した。
その間、僕はフランシスのふるまいについて何ひとつ不満を感じることはなかった。それが、あの厳しいお尻ペンペン、そして「今後やらかす度にお仕置き」という脅しが効いたのか、それとも彼女自身の分別が働いたからなのか、そのあたりはよくわからない。
彼女は相変わらず明るくて、笑ったり冗談を言ったりして取り巻きの男性たちと接していたけれど、誰に対してもちゃんと距離を保っていた。そしてブルックに対しては、もうこれ以上ないほどの塩対応となり、彼はあきらめてホテルから去っていった。
正直言って、彼がいなくなってくれて僕はほっとした。というのも、彼は容姿もよくて口も巧みであり、だからこそ自分の恋人のそばにずっといられるには、いささか危険すぎる男だったのだ。
ニースを出発した僕らは、そのままパリへ向かった。
リヴォリ通り沿いのホテルに宿を取ると、フランシスはたくさん持っていたドレスのコレクションに、さらに魅力的な衣服をいくつか買い足した。そして、僕たちは華やかな都の楽しみにたっぷり浸ることにしたのだった。
まず最初に、彼女はルーヴル美術館を徹底的に見て回りたがった。これには数日かかった。そのあいだ僕はというと、果てしなく続くような絵画と彫刻のギャラリーを延々と歩かされて、すっかりうんざりしてしまった。というのも、彼女は「チャーリーが一緒じゃなきゃ楽しめないの」と言って、いつも僕を連れて歩かせたからだ。
それから、テュイルリー宮やヴェルサイユの庭園を訪れ、ブローニュの森を馬車で何度も巡り、その他の見どころもあちこち回った。
そしてやっと定番の観光地をひととおり見終えたあと、いろいろと物事がわかってきた様子のフランシスが、「夜のパリも見せてよ」と言い張った。僕はフランス語が話せるし、土地勘もあったので、彼女をちょっと刺激のある場所にいろいろ連れて行った。
その中にはムーラン・ルージュも含まれていて、彼女はそこで有名なカンカン踊りを観ることができ、大いに楽しんでいた。彼女はまた、例のハイキックシーンでプリンシバル・ダンサーたちが身に着けていたペチコートやドロワーズ、靴やストッキングにもすっかり魅了された様子だった。
そして翌日にはさっそく出かけていき、その繊細で可愛らしい衣装一式をまるごと買い揃えてきた。それを僕に見せながら、彼女は笑いながらこう言った。
「ねぇ、私、ハイキックの練習するつもりなの。チャーリーのこと楽しませてあげる」
それからというもの、ほとんど毎朝のように、彼女はフリルのついたペチコートに、リボンがたっぷりあしらわれた、透け感のあるレースの深い飾り付きのドロワーズを身につけ、絹の長いストッキングと、先の尖ったハイヒールの靴を履いた。そして僕が椅子にのんびり腰をかけているあいだ、彼女は「ムーラン・ルージュ」のダンサーたちの真似をしようと、一生懸命踊ってみせた。
彼女がふんわりとした衣装をまといながら、くるくると軽やかに回り、すらりとした脚を高く蹴り上げる姿を見ているのは、実に愉快で目を奪われる光景だった。ドロワーズの隙間からは、金色のうぶ毛に縁どられた大事なところや、白く美しいお尻がちらりと覗き、それがまた、たまらなく魅力的だった。その姿はじつに魅力的で、毎回のように僕のペニスをそり立てた。
無論、いつも結末は決まって同じだった。
僕は息を弾ませる彼女を抱き寄せ、繊細なドロワーズを脱がせると、その時々の気分に任せて、さまざまな体位で彼女を愛した。
それ以外に僕が彼女を連れて行った場所のひとつに、十数人ほどの若い娘たちがいる、ある種の館があった。
そこでも、さまざまな種類の裸体タブローを観ることができた。しかし、内容はレズリー夫人の館で見たもの以上というほどではなかった。しかも、そこでは鞭打ちを題材にしたタブローは一切なかった。どうやらフランスでは、「鞭の愉しみ」はイングランドほどには好まれていないらしい。
とあるタブローでは、女性同士がどんな方法でお互いの情欲を満たし合うことができるのか、そのさまざまな手段が描かれていた。それを見たフランシスにとっては、まさに目から鱗のような光景だった。彼女は、女性同士がそんなふうに楽しむことがあるなんて、これっぽっちも想像していなかったのだ。
彼女は、愛のテクニックに関する多くのことについて、まだまだ無知も同然だった。僕はこれまで、トリバディズム(女性同士の性行為、主に外陰部同士をこすり合わせる方法)や、ディルド、その他セックスにまつわるミステリアスな世界のことは、一切彼女に話したことがなかった。
彼女は、男が女をいろいろな体位で挿入することは知っていた —— もちろん僕が全部教えてあげたからだが —— でも、彼女の知識はそこで止まっていた。
その晩、ホテルに戻ってから、二人でいろいろ見てきたことを話し合った。
「でもね、ああいうことって、本当に女の子同士でやってるとは思えないの」
「いや、あるさ。しかも、世間で思ってるよりずっと頻繁にね」 と僕は笑って言った。
それから彼女に聞いた。
「ほら、学校にいたころ、上級生が君の股あいだをくすぐろうとしたことはなかった?」
「うん、一度だけあるかも」とフランシスはちょっと恥ずかしそうに言った。
「大きい子が私を膝の上に乗せて、私のペチコートの中に手を入れて、ドロワーズを下ろしたの。それからキスをしてきたんだけど、そのとき、指を“あそこ”に入れてきたの。すごく痛かったし、怖かった……何が起きてるのか全然わからなかったけど、泣きながらブレイク先生のところに走って行って、何をされたか話したの。ブレイク先生はすごく怒ってたわ。その子のこと、バーチでお仕置きしたんだと思う。だって少しあとで、泣きながらお尻をさすって出てくるのを見たんだもの。それで、その子、私のこといやな告げ口女って言ったの」
僕は笑って言った。
「まあ、フランシス。君はその上級生に“おまた”をいじらせたくなかっただろうけど、きっとそういうのを気にしない子もいただろうさ。そういうことは、女学校あるあるらしい」
するとフランシスは、今夜僕たちが行ったあの館には、他にも変わった見せ物があるのかどうか尋ねてきた。
「もし君が見たいなら、男女がまさに『愛の戦い』をしているところを見せてあげるよ」と僕は答えた。
するとフランシスはその提案に爆笑し、「見てみたいに決まってるじゃない!」と言った。だから僕は、翌晩その施設に連れて行くと約束し、それから2人で寝床に入った。
翌晩の10時、僕たちはその施設へ馬車で向かった。
僕はマダムに見たいものを伝えると、彼女は微笑み、すぐに僕たちを小さいながらも快適にしつらえられた部屋へ案内してくれた。
その部屋は、シェードのついたランプがほのかに灯る、薄暗い雰囲気だった。部屋の片側には湾曲した木材で作られたパネルがあり、低い位置に巧妙に隠されたいくつかの覗き穴が設けられていた。その穴からは隣の部屋を覗くことができるのだ。
隣室は見事に調度が整えられ、明るく照らされていたので、フランシスと僕にはこれから繰り広げられる光景が細かいところまではっきりと見えそうだった。
マダムは二脚の楽な肘掛け椅子を覗き穴の前まで引き寄せ、「お掛けなさい」と僕たちに勧めた。それから彼女は部屋を出て行き、僕たちは椅子に腰かけ、覗き穴に目をくぎ付けにしてじっと待った。
しばらくすると、男と女が1人ずつ部屋に入ってくるのが見えた。男は30歳くらいのがっしりした体格の男で、正装をしていたが、ジェントルマンには見えなかった。女のほうは、体格のいい大柄な女で、少し下品ではあったが、決して見た目が悪いわけではなかった。年は25歳くらいで、シミーズと靴、それにストッキングしか身に着けていなかった。
その男女が自分たちが見られていることを知っていたかどうか、僕には分からない。けれど、少なくとも事の間、2人ともまったく自然で、気まずさのかけらもなくふるまっていた。そして、どうやら本当に楽しんでいたようだった。
無駄な時間は全くなかった。男は女のふくよかな赤い唇に音を立ててキスをすると、シャツ一枚の姿になり、彼女を膝の上に抱き上げてシュミーズを脱がせた。すると、靴と、太ももの中ほどまで伸びた長い緋色のシルクのストッキングだけを身につけた裸の姿があらわになった。ストッキングは、大きな黒いリボンのガーターで留められていた。
女の肌はかなり白く、大きな赤い乳首のついた、途方もなく豊かな胸をしていた。太ももはがっしりと太く、脚もまたふっくらとしていた。そして大きく張り出した下腹部は、濃い茶色の毛でびっしりと覆われており、大事な部分の裂け目は完全に隠されていた。いよいよ楽しい時間の始まりだった。男は女の乳首を一つずつ口に含み、嬉しそうに甘噛みしたり吸ったりしながら、両手で彼女の体中をまさぐっていた。
次に、男は彼女をうつ伏せにして膝の上に乗せると、その巨大な尻でしばらく遊んだ。尻を撫で回し、あちこちつねり、割れ目に沿って手を上下に滑らせた。そして、むっちりとした尻の肉を左右に開くと、その間にある箇所を覗き込み、にやりと笑った。そして男は、容赦のない力で彼女のお尻を叩き始めた。平手の音が部屋中に響きわたり、彼女の肉付きのよい尻の肉はゼリーのように震え、肌はみるみるうちに赤く染まっていった。彼女はしばらくの間、その痛みに耐えていたが、やがて身をよじって男の手をつかみ、(もちろんフランス語で)こう叫んだ。
「もういや!お尻叩きはもうやめて!」
そのあと彼女は男の膝からすべり降り、彼の足元にひざまずくと、シャツをまくり上げた。すると、先端が露わになった真っ赤な頭を持つ、堂々とそそり立った巨大なモノがあらわになった。彼女は頭を深く下げ、男のものの半分近くを口に含み、ガマヒュッチ(注:フェラチオの古英語表現)を始めた。同時に指先で彼の玉をくすぐりながら、男のほうは官能の喜びに目を輝かせ、彼女の豊かな胸を弄んでいた。僕は、このまま彼が彼女の口の中で果てるのではないかと思った。
だが、男は突然立ち上がると、女を腕に抱き上げてソファの上に寝かせ、彼女の脚を大きく左右に開かせた。すると、ふっくらとした秘部のゆるんだ赤い唇がぱっくりと開き、その内側の淡いピンク色の肉があらわになった。男は彼女の太ももの間に顔をうずめ、茂った陰毛の森に顔を埋めると、舌を割れ目に差し入れた。くすぐるように舌で刺激されると、彼女は身をよじらせ、脚をばたつかせながら、大きな声でくすくすと笑った。彼らはまさに、快楽の余韻を途切れさせまいと、長く長く味わっていたのだった。
ついに彼は彼女の上に身を横たえ、両手を彼女の尻の下に回して抱え込み、舌を彼女の口の中に差し入れた。そして、自らの剣を根元まで彼女の鞘に突き立てた。すると男は激しく腰を打ち始めた。シャツが背中の途中までめくれ上がっていたので、彼の裸の尻が上下に動き、まるで蒸気機関のピストンのように彼のペニスが女の中で出入りする様子がはっきりと見えた。女は腕を男の体に回し、脚を彼の腰に絡めながら、自らも尻を突き上げてその動きに応えていた。
男の動きは次第に激しさを増していき、女は跳ねるように身をくねらせ、彼の激しい突きに全身を震わせていた。やがて男の動きは短く鋭い突きに変わり、女はうめき声を上げて身をよじらせた。そしてついに、激しく突き込んだ瞬間、ふたりは同時に痙攣に襲われた。男が絶頂の瞬間に女を胸元に強く抱き寄せると、その尻の筋肉がぐっと硬直するのが見てとれた。
一方、女は下半身を大きくくねらせながら、奥へと精液が噴き上がるのを受け止めていた。そしてそのとき、彼女の顔には何とも滑稽な表情が浮かび、目をぐるりと上に向けて、白目だけが見えるようになった。 そして最後にもう一度身をくねらせたあと、二人は互いの腕の中に身を預け、激しい行為の余韻に息を荒くしていた。
これぞまさに情熱のセックスそのものであった。
それは実に淫らで刺激的な光景で、長いあいだそそり立ったままの僕の肉棒はズキズキ痛んだ。僕は椅子から立ち上がり、同じく椅子から尻を浮かせていたフランシスに目をやった。
彼女も、先ほど目の当たりにした場面に深く心をかき乱された様子だった。彼女の顔は真っ赤に染まり、胸は激しく波打ち、欲情にきらめく大きな青い瞳は、今にも飛び出しそうなほど見開かれていた。
彼女は一言も発さずに自らの服の下へ手を入れ、ドロワーズの留め具を外すと、脚を振って振り落とした。そしてソファの方へ歩いていき、そこに身を横たえると、僕に向かって誘うように口角を上げた。
欲情に燃えた僕は彼女のもとへ駆け寄り、ペチコートをさっとまくり上げて、広げられた脚の間に身を滑り込ませた。そして彼女を腕に抱きながら、激しく彼女と交わった。ただひたすらに、恍惚とした歓びのなかで。フランシスもまた、いつにも増して強い快感を感じているようだった。というのも、彼女は腰を激しく跳ね上げ、いつも以上に官能的に身をくねらせていたからだ。
その後、身なりを整えるとすぐに、僕はベルを鳴らしてマダム・ルブランを呼んで支払いを済ませた。それからフランシスと一緒に館を出て、レストランへ向かい、ちょっとした美味しい夜食を楽しんだ。最後にホテルへ戻ったのは、午前1時ごろだった。
だが、時刻は遅かったにもかかわらず、僕たちは腰を下ろして、その晩の出来事について語り合うことにした。ひととおり全体の感想を交わしたあと、フランシスがこう言った。
「驚いたことが2つあるの」
「何だい?」と僕は尋ねた。
「だって、あの女の人、男のひとのアレを口にくわえて、まるで吸ってるみたいだったじゃない。それにそのあと、男の人が今度は女の人のあそこに舌を入れてたじゃない。私たち、あんなふうにキスしたことなんて一度もなかったから」
「確かに、ないね。もし興味あるなら、今度やってみようか」と僕は笑いながら答えた。
「うん、たまにはそういうのも試したい」と彼女は言った。「だって、柔らかくて温かい舌でくすぐられるなんて、たまらない気がする」と、彼女は目を潤ませて僕を見つめ、熱っぽく言い添えた。
「最初のうちは夢中になるかもしれないけど、本物ほど満たされるわけじゃないよ」と僕は言った。
「まあ、とにかく、いつか試そうね」彼女は笑いながら言った。
それから続けてこう言った。
「ねえ、あの女の人が絶頂の瞬間、顔やばかったよね。白目むいちゃって……それにお尻をすごく激しくくねらせてたの、見た? もう、見てて滑稽だったな」
「もちろん全部見てたよ」と僕が答えると、彼女は続けた。
「ねえ、私もあなたとやってるとき、ビクビクお尻が動いちゃうの。どうしようもないの、滑稽かもしれないけど……でも、さっきのあの女の人みたいに、あんなアホ面にはなってないと思う」
「いや、なってるよ」と僕は笑いながら言った。「女の人ってさ、いざってときになるとみんな目を上に向けて、変な顔になるもんなんだ。それに、中に出されるって感じた瞬間には、誰だろうとお尻をくねらせるもんさ」
「やだっ、でもね、2人が “してる” のを眺めるのって、ちょっとドキドキしたわ。でも、あの2つのむき出しのお尻が上下にぶんぶん動いているのは、笑い出しちゃった」
「そうだろ、フランシス。動きはめっちゃマヌケに見えるけど、感覚は最高だろ? な、ご存じの通りだ」
僕は微笑みながら言った。
「うん、気持ちいいもの」と彼女は笑いながら言った。
「じゃあ、ベッドに行って、その動きを練習しようか」
僕は椅子から立ち上がり、折れ戸を抜けて寝室へ向かった。彼女もあとに続き……まもなく僕たちのお尻は上下に動き出し、彼女は変顔で白目を剥き、身をよじり、くねらせて、甘美な痙攣にとらわれていた。
2週間が過ぎた。僕たちはマダム・ルブランの店を再訪することはなかったけれど、それでもいろいろな形で楽しく過ごしていた。
4月の中頃、空気は春らしく穏やかで、ブローニュの森の木々は芽吹き始め、スノードロップやクロッカスの花が満開だった。そんな陽ざしの明るいある朝、ヴェルサイユで1日を過ごそうと決めた。
朝食を済ませると、フランシスはとびきり可愛らしい服に身を包み、それから僕たちはホテルを出て、まずパレ・ロワイヤルへ向かった。出発前にお店を見てまわろうというつもりだった。
でもしばらく歩き回ったところで、フランセスが「あっ」と声を上げた。鍵も全部、5ポンド以上入った財布も、部屋に置いてきてしまったというのだ。
それですぐに僕たちはホテルへ引き返し、忘れ物を取りに部屋へと上がった。
寝室のドアを開けると、いつも僕たちの世話をしてくれている担当メイドのアネットが、フランシスのトランクのひとつのそばにひざまずいていた。中身はほとんど床に広げられていた。僕が「夕食までには戻らない」と伝えていたので、アネットは僕たちがその日は一日外出していると思い込んでいたらしい。
僕たちが突然部屋に入ってきたのを見て、アネットはぱっと立ち上がり、顔を真っ青にして、そのまま立ち尽くした。完全にうろたえて、全身を小刻みに震わせていた。
彼女はスラリとした背の高い、なかなかの美人で、年は21歳くらい。引き締まった体つきに、黒い髪と瞳、赤い唇、白い歯、そしてちょっと生意気そうな小さなネ・ルトルセ(上向きの鼻)をしていた。肌は澄んだオリーブ色で、黒のよく体に合ったワンピースに、白いエプロンと襟、カフスを合わせていた。ふわりとした豊かな髪は、白いフリルのついたキャップにスカーレットのリボンで飾られていた。
フランシスはすぐに化粧台へ向かった。そこに財布を置いたはずだったのだが、なくなっていた。彼女がそのことを僕に伝えると、僕は部屋のドアに鍵をかけ、その鍵をポケットにしまった。
それから震えているアネットのところへ行き、彼女の大きなポケットを調べた。すると中からは、財布のほかに、レースのハンカチが6枚、手袋が同じく6組、それにトランクから盗られたと思われる小物がいくつも出てきた。
もし僕たちが、たまたま戻らず、そして犯行の現場を押さえることができなければ、盗んだのが誰かを知ることはできなかっただろう。
フランシスはフランス語が話せなかったので、僕が代わって話をすることにした。僕はアネットにフランス語でこう言った。
「現行犯だな、アネット。このこそ泥め。ホテルの支配人に言って警察に引き渡してもらう前に、何か言い分はあるか?」
僕は彼女を本当に警察に突き出すつもりなどなかった。そんなことになれば面倒この上ない。ただ、彼女をしっかり怖がらせてやろうと思っただけだった。
彼女はわっと泣き崩れ、手を揉みしだきながら、懇願するような調子で叫んだ。
「ごめんなさい、お客様! どうかお願いです、警察はご勘弁下さい。私は本当は正直者です。でもあのとき、テーブルの上に財布と鍵があるのを見て、つい魔が差してしまって……お願いです、逮捕だけは許してください、どうか……母がいるんです。私が支えなきゃいけないんです。どうか、お願いです、お許しを!」
彼女はひどく怯えていた。そしてそのときふと、これはひょっとすると面白い展開になるかもしれないと思った。刑務所送りになるくらいなら、むしろ僕にお仕置きされる方を選ぶんじゃないか? そう考えたんだ。どちらにするか、彼女に選ばせてみよう。できれば鞭の方を選んでほしいと、内心願っていた。
彼女は清潔感のある、なかなか可愛らしい娘だったし、彼女をうつ伏せにして、そのお尻を赤く染め上げる光景を想像しただけで、僕のペニスは既に反応していた。
そこで僕は彼女にこう言った。
「君は泥棒だ。だから当然、罰を受けなければならない。でも――もし君が、イギリスでいたずらな女の子たちにするような鞭のお仕置きを受け入れるなら、警察には突き出さないことにしよう」
彼女は泣き止み、大きな黒い瞳をぱっと見開いて、しばらく僕の顔を見つめた。まるで、僕の言ったことの意味がすぐには飲み込めなかったようだった。だが次の瞬間、ほっとしたような口調で言った。
「お客様、どうか、刑務所に入って評判を失うくらいなら……どんなお仕置きでも、あなたがお望みになるものなら、お受けいたします」
「いいだろう。だが、きついお仕置きだということは、覚悟してもらうからな」
僕が言うと、彼女はわずかに身を震わせ、かすれた声で尋ねた。
「で……でも、お客様、その、鞭のお仕置きって……どういう風に?」
「もちろん、裸のお尻に対する、尻叩きだ」と僕は答えた。
彼女は顔を真っ赤に染め、再び泣き出してしまった。そして怯えきった声で言った。
「そんな……お客様、私、お仕置きを受けるって申し上げたとき、まさか裸でされるなんて思いもしませんでした。服の上からだと思ってたんです。脱がされるなんて……そんなの耐えられません。恥ずかしすぎます……そんなの、無理です……!」
「そうか……僕の言うことに従うつもりがないのなら、残念ながら警察を呼ぶしかないね」と僕は言い、ベルのひもへ歩いて行き、それを手に取った。
「ベルを鳴らさないでください! お願い、ちょっと待って……ああ、どうすればいいの……お願いです、警察だけは呼ばないで……!」
彼女は哀れな声で泣き叫びながら、両腕を僕の方へ差し伸べ、必死に懇願する仕草を見せた。涙が火照った頬をつたって流れ落ちていた。
「君が、むき出しのお尻にお仕置きを受けることに同意しないなら、僕はベルを鳴らす」と、僕はきっぱりと言った。
彼女は両手を揉みしだきながら、激しく泣きじゃくった。しばらくの沈黙のあと、彼女は嗚咽まじりに、途切れ途切れの声で言った。
「お……お客様……裸のお尻なんて、あまりに恥ずかしすぎます……でも……でも、刑務所には行けません……受け入れます……私……従います……ああ……ああ……」
そう言うと、彼女は僕たちに背を向け、顔をエプロンで覆って、しゃくりあげながら泣き続けた。
この娘が自分の尻を晒すということに感じていた恐れは、実に真に迫った、演技ではないものだった。フランスの部屋係にも、慎み深い娘はいるようだ。
だが正直に言えば、その戸惑いに満ちた様子こそが、この一件全体にいっそうの興を添えていた。「鞭の愛好家」にとっては、叩かれる痛みに加えて羞恥を感じている女の子をお仕置きすることほど、快感をもたらすものはないのだから。
このやり取りのあいだずっと、フランシスは興味深そうに見つめていたが、何が言われているのかはまったく分かっていなかった。そして、とうとう我慢できなくなったように、僕に尋ねてきた。
「ちょっと、何話してるの?」
僕は、アネットに「刑務所に行くか、それとも鞭を受けるか」の二択を与えたこと、そして彼女が鞭を選んだことを説明した。
「妥当なお仕置きね」フランシスはきっぱりと言い、少し皮肉っぽく笑った。そして目を輝かせて言った。
「ねえ、私にやらせてよ。前から一度、鞭打ちのお仕置きってやつをしてみたかったの。今回は絶好の機会。ね、お願い、私にやらせて」
僕は笑ったが、その気持ちは理解できた。だから、彼女の願いを叶えてやることにした。
「よし、いいだろう」と僕は言った。「僕が “馬” になってこいつを背負うか」
フランシスはとても嬉しそうな顔をして、すぐに行動の準備に取りかかった。手袋、帽子、そして上着を脱ぎ捨てると、こう言った。
「よく考えたら鞭なんてここにないじゃない。 手で叩くのは、痛くなるからいやだし……。何かおあつらえ向きの道具はないかな」
僕は部屋の中を見回し、使えそうな道具を探した。そして目に留まったのが、細くて小さなラグ・ストラップ(敷物を巻いて止めておくためのベルト)が2本。長さはおよそ2フィート、幅は半インチほど。一つで十分使えるだろう。尻肉を過度に傷つけず、しっかりと痛みを与えられるはずだ。そこで僕はそれを指差して、フランシスに一つ取るように言った。
アネットはまだ僕たちに背を向けたまま、エプロンを頭にかぶせて泣いていた。僕は彼女のもとへ行き、肩に手を置いて向き直らせ、顔を覆っていた手をそっと外しながら言った。
「この女性が君をお仕置きする。だから、僕がやるよりも罰はずっと軽くなるだろう。さあ、ドレスとコルセットを脱ぎなさい」
「どうか、ムッシュー……お部屋を出ていただけませんか。マダムに叩かれているあいだ、絶対に抵抗しないって約束しますから……」
アネットは手を握り合わせ、懇願するようにそう言った。
「部屋を出るつもりはない。君がお仕置きを受けるあいだ、僕が押さえておくことにしたんだ。さあ、ドレスとコルセットを脱げ。急げ。さもないと、ベルを鳴らすぞ」
彼女は一瞬ためらった。僕が再びベルのひもに手をかけると、彼女は深いため息をつき、震える指でゆっくりとドレスとコルセットを脱いだ。そして僕たちの前に立ったが、顔をそむけ、涙をぽろぽろと流していた。彼女のシュミーズは襟がやや大きめに開いていたので、小ぶりながら形の整った胸の谷間がかすかに見えていた。
僕が彼女に服を脱がさせたのは、女を“ホース” のポジションにして鞭打つとき、ドレスやコルセットを着たままだと、ペチコートを十分にたくし上げてお尻をしっかり露出させるのがとても難しいからだ。
部屋の片側には大きな鏡があり、その向かいには長い鏡のついたワードローブがあった。そしてふと思いついたのだ。その2つの鏡の間に立てば、鏡越しに彼女の全身を映して見ることができる。つまり、実際に鞭打ちの場面を鑑賞できるというわけだ。
「さあアネット、これから君を僕の背中に背負って拘束する。マダムが君をお仕置きするあいだ、しっかり支えていてあげよう」
そう言って、僕はすすり泣いている彼女のもとへ向かった。アネットは震えながら身を引いたが、抵抗はしなかった。僕は彼女の両手首をそれぞれの手でつかみ、腕を僕の肩越しに引きまわした。そして身をかがめて、彼女の両足が床からしっかり浮くように持ち上げた。こうして、まさに “ホース” のポジションとなったわけだ。僕は身長が6フィートあるし、彼女は背が高いとはいえ軽かったので、苦もなく持ち上げられた。
「フランシス、いいか、鞭が当たれば、きっとこいつはじたばたと暴れるはずだ。だからペチコートが途中でずり落ちてこないように、しっかりまくり上げて留めておくんだ」
フランシスは、白くて清潔なアネットのペチコートを肩のあたりまで丁寧に巻き上げ、それが落ちてこないようにしっかりと留めた。彼女はシュミーズをドロワーズの下に着ていたが、その体勢のせいでドロワーズはお尻にぴったりと張りついていた。僕はふたつの鏡の間に立っていたので、その様子がすべて、鏡越しにはっきりと見えていた。フランシスがドロワーズの紐をほどこうとすると、アネットはすすり泣きながら訴えた。
「マダム、お願いです、下着は下ろさないで……!」
だが無情にもドロワーズの紐は解かれ、ひざまで下ろされた。彼女はさらに懇願した。
「どうか、シュミーズだけはそのままで……全部脱がされるのはいやです……!」
だがシュミーズも巻き上げられ、ペチコートに留めつけられた。その結果、アネットの背中の中ほどからストッキングの上端までが、すっかり露わになった。そして最後の衣服が剥がされたのを感じたとき、彼女は羞恥に満ちた低いうめき声を漏らした。
彼女のお尻は小ぶりだが形がよく、太ももはすらりとしていて、脚も細く引き締まっていた。脚にはぴったりとした白い綿のストッキングを履いており、太ももの中ほどで黒いリボンのガーターに留められていた。足首はきゅっとしていて、靴はきちんと磨かれており、とても整って見えた。オリーブがかった肌はなめらかで、繊細な質感が感じられた。
すべての準備が整ったところで、僕は泣きじゃくるアネットに声をかけた。彼女は恥ずかしさと恐怖で身を震わせていたが、僕はこう言った。
「いいか、もう覚悟を決めて、しっかり耐えろよ。大声を出すと周りに気付かれるぞ」
フランシスはストラップを手に取り、その一部を手に巻きつけて、鞭打ち用におよそ18インチほどの長さを残した。
「いいかい、フランシス」僕は言った。「2ダース、つまり24回叩いてくれ。ただし、鋭く、けれどやりすぎないように。最初はお尻の上の方から太ももに向かって打っていって、それからまた腰のあたりまで打っていくんだ。落ち着いて、打ち跡が交差しないように気をつけろよ」
フランシスはストラップを空中で大きく振りかぶった。その瞬間、目の前の鏡を通して、僕にははっきりと見えた。アネットの目が恐怖に見開かれ、お尻の頬がきゅっとすぼまり、滑らかだった肌が鳥肌だっていた。
ビシッ!
長い革のストラップが、ピシッと鋭くアネットのお尻に振り下ろされた。オリーブ色の尻の両丘には、ストラップの幅そのままの赤い筋が一瞬でくっきりと浮かび上がった。鋭い痛みに、アネットは僕の背中の上でびくんと痙攣し、押し殺したような声を上げた。
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
フランシスは、腕を優雅に振るってストラップをしならせ、まるで熟練の使い手のような見事な手さばきで打ち始めた。一打ごとに力加減を均等に保ち、ゆったりとしたリズムで、下へ下へと順番に打ち下ろしていった。
その結果、アネットの肌には赤い線が、まるで等間隔に刻まれたかのように並んでいった。
これまで僕は、女の子を“ホース”する台になったことはなかった。だから、彼女の乳房や腹が僕の背中に押し当たってきて、太ももの内側が僕のお尻に触れながら、痛みによじれるその感触は、初めての感覚であり、そして、どこか心地よいものでもあった。
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
アネットはお尻をくねらせながら跳ね回り、左右に腰をよじらせた。鞭が一打ごとに彼女の肌をビクッと震わせ、アネットは肩越しに振り返りながら、苦痛に歪んだ表情で、空を切ってお尻に振り下ろされるストラップを見つめた。彼女は息を詰まらせ、泣き声を上げ、涙は火照った頬を滝のように流れ落ちた。その頃には、フランシスの鞭は太ももにまで届いており、彼女のお尻全体が、赤と白の縞模様できれいに染め分けられていた。
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
フランシスは今や、鞭を下から上へと打ち上げていた。ストラップが少女の張りのある肌に当たる度に鋭い音が響き、部屋中に反響した。アネットは痛みでかかとを蹴り上げ、僕の手から手首を振りほどこうと必死にもがいた。叫び声は上げなかったが、苦しげにうめき、哀れな声で泣きながら、むせかえるような調子で叫んだ。
「マダム!マダム!ああ! そんなに強く叩かないで……ああ、そんなに強く……!マダム、どうか、お情けを……もう……もう反省しました……ひいっ……ひいいっ……!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
彼女のうめき声はやがて、低く抑えた悲鳴へと変わっていった。アネットは脚をあまりにも激しく振り乱したため、ドロワーズが脱げ落ちてしまい、もがき、身をよじるうちに、僕の視界には彼女の腿のあいだの割れ目に生えた黒い毛がちらりと見えた。あまりに激しく暴れるものだから、僕も体勢を保つのに苦労するほどだった。
ビシッ! ビシッ!
フランシスは最後の2打を少し強めに打ち込み、そのたびにアネットは甲高い悲鳴を上げた。そして鞭打ちが終わったときには、腰のあたりから太ももにかけて、彼女のお尻全体が、縞模様が重なり合って真っ赤に染まっていた。
「さあ、アネット。もう終わりだ。行きなさい」と僕は言った。
彼女はドロワーズを拾い上げ、横を向いてそれを脚に通し、腰のひもを結んだ。それから、すすり泣きながらコルセットとドレスを身につけ、あふれる涙をエプロンでぬぐった。最後にキャップの位置を整えると、あっという間に部屋を出て行った。
今回のの鞭打ちは私に大きな興奮を与えてくれた。というのも、この出来事があまりに予想外の展開であり、あまりに常軌を逸していたからだ。私はとてもエキサイトし、当然のように勃起していた。僕はフランシスの方を見た。彼女は明らかにこの役目を楽しんでいたようで、目を輝かせ、にこにこと笑っていた。
「さて、これで満足したかい?」と僕は笑いながら尋ね、彼女の耳を軽くつまんだ。
「ああ、そうね! それに、思ったけど、お尻を鞭打つのって、思ったより興奮するじゃない。チャーリーがこれに夢中になる理由がよくわかった」
そう言いながら、フランシスは僕のズボンの前立てに視線を向けた。そこは明らかにピンと膨らんでいた。彼女はクスリと吹き出した。
「ねえ、今の出来事があなたに効果抜群だったって丸わかりじゃない。えー、じゃあ、次は私が鞭の味見をする番ってこと? でも、お願いだからこのドレス、くしゃくしゃにしないでね。買ったばかりなんだから」
「わかったよ、女の子の逆鱗に触れるのは怖いからな」と僕は笑いながら言った。
彼女を安楽椅子の背に身をもたせかけさせ、上品なスカートを持ち上げて、丁寧に背中の中央まで折りたたんだ。続けてペチコートをたくし上げ、ドロワーズの裂け目を開くと、ふっくらとした白いお尻の頬が、上質なリネンの布にふちどられてあらわれた。その肌は、そのリネンとほとんど変わらないほど滑らかで白かった。
私は彼女に「アン・ルヴレット」で入れ始めたが、興奮しすぎていたため、即座に果ててしまった。
しかし、私のペニスはまだかなり硬いままだったので、ペニスを引き抜くことはせず、再び仕事に取りかかった。そして、フランシスとの息の合った、長時間に及ぶ最高においしい戦いの後、私は本日2度目の熱い精子を放出した。
彼女はあまりの官能的な快感に、ほとんど気を失いかけた。脚から力が抜け、そのまま崩れ落ちそうになったのを、僕が支えていなければ倒れてしまっていただろう。 一方で、彼女の服は少しも乱れていなかった。
僕は彼女にワインを一杯持ってきてやった。すると、まもなくいつも通り元気を取り戻し、身支度を整えてから、もともとの予定通り静かにヴェルサイユへ向かった。その日一日を、当初の計画どおりに過ごした。
アネットは別の部署に異動を願い出たのか、それ以降、姿を見ることはなく、残りの滞在期間は別のメイドが部屋を担当していた。
僕たちはさらに2週間パリに滞在したが、ここで語るほどの出来事はもうなかった。
それから僕たちはロンドンへと帰還した。フランシスは初めての海外旅行をとても楽しんでいたようで、見違えるほど生き生きとしていた。僕は彼女を別宅に送り届けたあと、自分はオークハーストへと向かった。