


— モードの退場。
— ハネムーン。
— フランシスの美しさと魅力。
— 彼女の不思議な願いと、それがいかにして叶えられたか。
— 愛の尻叩き。
— 官能的な追憶。
3日後、モードは結婚した。でも、僕もフランシスも式には出席しなかった。ただ、「幸せになる日」の朝、かつての恋人が家を発つ直前に、僕は彼女に一枚の小切手を渡した。家具をそろえるのに十分な額で、結婚祝いとしても少し余るくらいの金額だった。それから僕は彼女にキスを一つ贈り、5年以上続いた関係に区切りをつけ、良き友人として笑顔で別れを告げた。
彼女はきっと、いい奥さんになったんだと思う。やがて母親にもなったし、近所に住んでいた間は、僕もたまに道で彼女とすれ違って、そのたびに少し立ち話をしたものだ。でも、僕は一度も彼女との関係を再燃させようとは思わなかった。もっとも、もし僕がその気になっていたら、彼女はきっと受け入れてくれたと思う。
しばらくして、彼女と夫はロンドンを離れ、僕は二度と彼女に会うことはなかった。
こうして、モードという女性は、この僕たちの物語から退場したのだった。
さて、フランシスと僕はというと、二人きりで静かに「新婚生活」を始めることにした。
別邸に残っていた使用人は2人。料理人とメイドで、どちらも分別のある中年女性だった。2人ともモードのもとで5年間働いていたので、僕にとってはすっかり顔なじみだったし、彼女たちも僕のやり方をよく分かっていて、僕が何をしようと驚くようなことはなかった。
日々は穏やかで心地よく過ぎていった。
フランシスは、あらゆる意味で魅力的な相手だった。頭が良くて気の利いたところがあり、毎日新聞に目を通していたので、時事の話題についても僕としっかり議論ができた。それができる女性は、正直そう多くない。
それに、フランシスはいつも機嫌がよくて、僕の頼みごとにはどんなことでも快く応じてくれた。中でも僕が特に気に入っていたのは、彼女の身だしなみへの細やかさだった。朝食の場に、だらしない格好や乱れた様子で現れることは一度もなかった。いつもお風呂あがりのさっぱりした様子で、頬をほんのり染めながら、きちんとした服に身を包み、髪も整えて、にこやかに階下へ降りてきた。
こういう点、そして他にもいくつかの点で、彼女はモードとはまるで正反対だった。モードはといえば、朝になるとバスローブにスリッパ、髪はざっくりまとめただけの姿で、気だるそうに現れるのが常だった。
フランシスはとてもセンスがよくて、僕も金銭的に一切制限をかけなかったから、彼女はもともとの嫁入り衣装もあるのに、どんどん素敵なドレスを買い足していった。
一緒に外出するたびに、彼女の美しい顔立ちと上品な装いは、道ゆく人々の敬意を込めた視線を自然と集めた。というのも、彼女の身なりには決して派手すぎるところがなく、まさに淑女と呼ぶにふさわしい雰囲気だった。そして、そんな恋人を僕は心から誇りに思っていた。
フランシスが必要な際に馬車をいつでも手配できるように、僕は馬車屋と、きちんと整備されたヴィクトリア馬車やブルーム馬車の契約をしていた。だから僕たちはよく、一緒に馬車に乗って出かけたものだった。
僕はいくつかの高級クラブの会員だったので、気が向いたときにふらっと立ち寄っていた。フランシスは分別が身についたようで、こちらが一人で外出することに文句を言うようなことはもうなかった。彼女には自分なりの楽しみがたくさんあった。例えば、読書が好きだったので、毎週マディーズから本の箱を届けてもらっていた。
僕は自分の気ままに時間を過ごしていたが、たいていは家でフランシスと夕食をとった。彼女はいつもきちんとドレスに着替えて食卓につき、料理もたいてい美味しかった。腕のいい料理人がいて、毎回きちんとした食事を用意してくれたからだ。
僕はフランシスに対して誠実だった。ロンドンにいるあいだはいつも彼女と一緒にベッドに入り、愛し合うことを心から楽しんでいた。だから、この小さな別邸での生活は、全体としてとても穏やかで幸福なものだった。レストランでの食事に出かけることもよくあったし、そのあと劇場や娯楽施設に行くこともあった。フランシスは何を見ても新鮮に感じるようで、いつも目を輝かせて喜んでいた。
僕は彼女のためにピアノを買い、先生もつけてやった。もともと音感がよかったので、すぐに簡単な曲は弾けるようになった。そして、彼女がとてもきれいな声をしていることにも気づいたので、僕のお気に入りのバラードをいくつか覚えさせ、僕が家にいる夜には、それを歌ってもらうのが楽しみになった。
狩猟の季節が続くあいだ、僕はよく数日ずつオークハーストに滞在した。でも、再びルーシーと肉体関係を持つことはもなかった。実際、彼女はできるだけ僕の前に現れて、アプローチをしているようだった。とはいえ、あからさまに迫ってくるようなことはなかったし、たぶん、前に僕から受けたあの壮絶なお尻ペンペンを、もう一度食らうのはごめんだと思っていたんじゃないかな。
けれど、数日間の外出から戻るたびに、僕はいつもあの別邸に帰れるのが嬉しかった。
笑顔で迎えてくれる、美しくて身なりの整った若い女性がいて、僕のためにちゃんと美味しい夕食を用意してくれている。そして、そのあとの夜は、彼女の生き生きとしたおしゃべりでずっと楽しませてくれるのだ。
それから迎える、あの甘美な夜!
時が経つにつれて、フランシスはますますエッチになっていった。実際、時には僕よりも彼女のほうが求めてくることもあったし、昼間でさえ、ちょっとした作戦で僕に手を出してもらおうと仕向けてくることもあった。
ある日、彼女がどんなふうにして僕にその気にさせたのか、お話ししようではないか。
その日の午後は寒くて、僕たちはいつものように、居間の暖炉のそばでお茶を飲んでいた。
フランシスはとても可愛らしかった。レースの縁取りがついたブルーのサテンのティーガウンを着ていて、それが彼女の優美な体のまわりに、やわらかく波のようにまとわりついていた。袖は広くてゆったりしていて、くっきりとした輪郭のあるミルクのように白い腕が、えくぼのできる肘まで見えていた。
彼女は僕のためにお茶を一杯注ぎ、それを持ってきてくれた。それからしばらく部屋の中をそわそわと動き回り、テーブルのあちこちに置かれた小物をいじったり、ときどきピアノに座っていくつか和音を鳴らしたりしていた。やがて彼女は僕のところにやってきて、僕の顔をじっと見ながら言った。
「なんだか今日の午後は落ち着かないの。ちょっと変な気分になっちゃってて……」
「どんな気分なんだい?」と僕が訊くと、
「オークハーストで悪い子だったときに、チャーリーがしてくれたみたいに……お膝にのせて、お尻をペンペンしてほしいなっーって……」
と、なんとも言えない不思議な表情で答えた。僕は笑って言った。
「ああ、確かに僕は、いつだって君のペチコートをめくるのは大歓迎だ。ただし、ひとつ言っておくけど、僕は “ふり” で叩くのは好きじゃない。本気で叩くのが好きなんだ。だから、悪い子だった時のお仕置きみたいに、お尻がヒリヒリになる覚悟はしておけよ」
「それがいいの」と彼女は答えた。「悪い子として叱られて、お尻をペンペンされたいっていうのが、今の気分なの。前と同じような感じで。厳しすぎず、でも緩くもなくね」
こんな不思議なお願いをされて、僕は正直、とても嬉しかった。彼女のお尻を叩いたのは、まさかの1年以上も前のことだった。しかも最後に誰かをお仕置きしたのは、数ヶ月前にモードに最後の鞭を与えて時だ。この物語の中ですでに何度も述べたとおり、僕にとって「お尻を叩く」という行為は、いつだって深い官能的な喜びをもたらすというのに。
そこで僕は、かつてオークハーストで彼女を叱っていたときのような厳しい声でこう言った。
「今日の午後は、ずいぶんと悪い子だったじゃないか。きっちりお尻を叩いてやる。僕の膝の上に横になりなさい」
すると彼女はすっかりその気になって、わざと怯えたような表情を浮かべ、しぶしぶといったふうを装いながら、僕の膝の上に体を横たえた。上品で美しい若い女性が、そんなふうに僕の膝の上に身を預けたとき、ズボン越しに、僕の一物は勢いよく反応していた。
僕は彼女の可愛らしいブルーのサテンのスカートを、できるだけ高くまくり上げた。その過程で、布はかなりくしゃくしゃにしわが寄ってしまった。そしてその喜びをじっくり味わうために、ラベンダーの香りがほのかに漂うレース付きの真っ白なペチコートを、一枚ずつゆっくりとたくし上げていった。さらに、繊細な絹のシュミーズも同じように、丁寧にめくり上げていった。
そこで僕は手を止めて、彼女の丸みを帯びた尻の輪郭をじっと見つめた。そこには、上質なリネンでできた、レース飾りのついた可愛らしいドロワーズだけが覆いかぶさっていた。彼女が膝の上で腰を反らせて横たわっていたせいで、その薄布はふっくらとした肉付きの良い双丘にぴったりと張りつき、透けた生地の向こうに、うっすらと桃色の血色が感じられた。
僕はドロワーズの留め具を外し、それを彼女の脚からすっかり脱がせた。そして、僕の膝の上にあらわになった、広くて深みのある、まばゆいほど白く美しい素肌の尻を、目を潤ませながら心の底から見惚れた。僕は彼女のふっくらとした、ほどよく引き締まった太ももにも目をやり、その形の整った脚の美しさに見惚れた。パールグレーの絹のストッキングがぴったりと脚に沿っていて、実に魅力的だった。ガーターは濃い青のサテンで、小さな足は、えんじ色のモロッコ革でできたハイヒールの靴にすっぽりと収まっていた。
それは、まさに目を奪われるような光景だった。目での欲望をじゅうぶんに堪能したあと、今度は触れる喜びを味わうことにした。彼女の腰から膝にかけて、ビロードのような肌をゆっくりと撫で、張りと弾力のあるお尻の肉を指でしっかりと揉みしだいた。全体を指先で押し、揉むたびに、血の気が引いたり戻ったりするのがわかった。だが、いちばんの愉しみは、まだこの先に待っていた。
下着をめくるときには、前も後ろもすっかり腰の上まで押し上げられるように、あらかじめコルセットを少しだけ緩めておいた。そのおかげで、今、すべてをしっかりと持ち上げることができた。そして僕はズボンのボタンを外し、昂ぶったものを解き放つと「それ」は強く跳ね上がると、彼女の裸の下腹、まさに「あそこ」のすぐ上あたりに強く押し当てられた。
その感触に、彼女ははっきりと反応した。体にかすかな震えが走ったのが、僕にはわかった。
すべての準備が整ったところで、僕は彼女のお尻を叩きはじめた。容赦なくというほどではなかったが、かつてオークハーストで彼女が悪い子だったときに叩いたのと同じくらいには、しっかりと打った。彼女が望んだ、まさにその通りに叩かれるべきだろう。
僕はゆっくりとしたペースで、彼女のお尻を叩いていった。ひとつひとつの熱い平手打ちに、彼女はぴくっと体を反応させ、そのたびに白百合のように白い肌の上に、五枚花びらの赤い花がひとつずつ咲くように浮かび上がった。
お尻が赤くなるにつれて、ひりひりとした痛みが増し、彼女は昔のように身をよじって痛がりはじめた。けれど僕は、それまで感じたことのないほどの深い官能的な快感を味わっていた。なぜなら今回は、彼女のひんやりとしてやわらかな裸の下腹が、僕のそそり立ったペニスの先端に直接擦りつけられていたからだ。
そしてついにフランシスは、後ろからののペンペンの感覚と、前からのの突き上げられるくすぐりの刺激が重なり合い、興奮の絶頂に達した。もう、それ以上はこらえきれなかった。彼女は僕の膝の上で体をひねり、上目づかいに僕を見上げた。頬は赤く染まり、唇はわずかに震え、大きな青い瞳には涙がにじんでいた。けれどその奥には、熱を帯びた欲望の光が確かにきらめいていた。
「や。やめてっ……!」と、彼女は息を詰めるように叫んだ。「お尻はもういい! 他のを! 燃えてるみたい! 早く抱いて! 犯してっ!」
彼女がそんな言葉を口にしたのは、それが初めてだった。そして僕もまた、体の内側から火照っていた。だから彼女を腕に抱きかかえると、そのままソファに横たえ、ペチコートをおへそのあたりまでめくり上げた。そして彼女をしっかりと抱きしめながら、指先で秘部をそっと開き、一気に深く、剣先を彼女の中へと押し込んだ。
そして僕は、夢中になって彼女を突き上げた。
すべてが終わったあと、彼女はソファの上にあえぎながら身を震わせ、しばらくのあいだ、あたりのことが何もわからない様子だった。彼女のペチコートはお腹の中ほどまでまくれ上がり、脚は大きく開かれていたので、あそこがわずかに開いたまま、すべてが僕の目にさらされていた。そして、柔らかな金色のうぶ毛のあいだには、真珠のように小さな白いしずくがいくつか、きらりと光っていた。
この欲しがり屋の子は、自分の望んでいたことを、ついに手に入れたわけだ。お尻ヒリヒリの代償を払って、ではあるけれど。きっと彼女の頭の中には、僕が彼女をお仕置きし続ければ、そのうち興奮して本番に持ち込んでくるだろうという、抜け目のない計算があったのだ。
実際、最初から最後まで、すべてが僕にとっては大きな悦びだった。愛しい恋人の白く美しいお尻を叩くのは本当に楽しかったし、そのあとの一心同体となった時間も、とびきり気持ちよかった。僕はズボンのボタンを留めながら、笑いながら言った。
「さあ、おてんばフランシス。服を元に戻しなさい。お楽しみのお仕置きはこれでおしまい。どうだった? 気に入った?」
彼女はぱっと立ち上がってドロワーズをはき、腰のひもを結びながら、僕にいたずらっぽい笑みを向けた。それからまたソファに身を投げるように横たわり、大きな青い瞳で僕を見つめた。その視線にはどこかうっとりとした、官能的な光が宿っていた。
「やっぱり、お仕置きはよくない! すごく痛かったんだからね。でも、後半戦は……最高だった。あれだけ気持ちよかったなら、ちょっとくらい痛いのも我慢する価値はあったかもね。それにしても、すごかった……チャーリーも、いつもよりずっと昂っていた気がする。ねえ、あれって、私にお尻ペンペンしたから、いつもより興奮してたの?」
「もちろん。お尻を叩くと、いつだって興奮するんだ。それにさ、昔オークハーストにいたころ、君が女の子だってわかった後は、お尻叩きのお仕置き後は、君とやりたいっていう気持ちを我慢するのがやっとだったんだからな」
「やだっ!」と彼女は楽しそうに笑って言った。
「やっぱり、チャーリーは私のお尻叩くの、好きなんだろうなって思ってたの。それに前にも言ったけど、私もね……叩かれるの、けっこう好きだっかも。なんだか、変な気持ちになったの。すごく痛いのに……でも、なにかを強く求めるような、そんな不思議な感覚があったの。そのときは、自分でもそれが何なのか分からなかった。でも今なら、はっきり言えるわ。あれは、エッチな望みが、私の中で目を覚まし始めていたのね」
「そう、それそれ。そして僕はすぐに、君がかなり卑猥な性質を持ってる子だって気づいたんだ」
僕が言うと、彼女はくすっと笑って言った。
「うーん、そうかも。認めちゃうけど、私、好きな人といちゃいちゃするのが大好き。でも、不思議。どうしてチャーリーは、あんなに長いあいだ、気付かないふりをして我慢できたの? もっとずっと早く私を抱くこともできたのに」
僕は笑って言った。
「我慢するのは本当に大変だったんだ。言っておくけど、何度も危いところだったんだ。君に手を出しそうになったことが何度もあったからね。でもさ、知ってるとおり、僕はよくこの家のモードに会いに来てたろ? それで今だから打ち明けるけど……今はもう、君がたったひとりの恋人なんだから言ってもいいよな。実は、気が向いたときは、メイドのルーシーともそういうことをしてたんだ」
「えっ? あのぽっちゃりメイドの!?」
彼女は笑いながら叫んだ。
「びっくり。なんで彼女? あの家には、もっと可愛い人がいたじゃない」
僕は、最初にどうやってルーシーと関係を持つようになったかをフランシスに話して聞かせた。それから、ルーシーがどうやって僕に「迫ってきた」か、そしてそのあとで僕がどれほど厳しくお尻をペンペンしてやったか、その顛末も説明した。
フランシスはかなり面白がって、笑みを浮かべながらこう言った。
「かわいそうなルーシー! 相当痛い目にあわせたんでしょ。チャーリーのペンペンって一発が重すぎるの。私のお尻、今だにヒリヒリなんだから」
それから笑いながら付け加えた。
「でも、今のこの家の使用人に関しては、あなたが手を出す心配はなさそうね。どっちも年配で、見た目も地味だもの」
僕は笑って彼女にキスをしながら言った。
「安心しなよ。あの2人に心が揺れるなんてこと、絶対にないから」
それから僕たちは寝室に向かい、洗面と着替えを済ませてから馬車でレストランへ行き、夕食をとった。そのあと劇場に出かけ、帰る前に軽く夜食を楽しんだのだった。