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― 臆病な少年。
― 学ぶべきこと。
― 不注意な生徒。
― 不可解さのある尻叩き。
― 鞭の恐怖。
― お仕置き。
― 哀れな“フランク”の尻。
― 女の子が男から鞭を受けることはあるのか?
2週間が過ぎた。フランクが過去のことについて何かを仄めかすことは、一度もなかった。彼はとても幸せで、これまでもずっと、このオークハーストの屋敷で僕と暮らしてきたかのようになってきていた。だが、出しゃばったり、なれなれしくなったりすることもなかった。
これまでの期間で、僕は少年の性格と気質は大体分かっていた。彼は率直で全くもって正直だ。優しい性格で、僕を好いてくれていて、家の中だろうと外だろうと一緒にいたがる。そして、僕が近所の晩餐会やパーティーに出かける度にとても悲しそうになる。
だが、猟にはついてこなかった。鳥が殺されるのが見ていられないとのことだ。そんなのは弱々しくて馬鹿げていると思ったし、そんな彼の潔癖さをよくからかってやった。船乗りになるために逃げ出したほど勇気がある少年が、キジ撃ちを見て震えるなんておかしな話じゃないか。船乗りは似合わないのではと思っていた自分の考えは正しかったようだ。
彼はいくつもの魅力を持っていた。彼に愛情を持つようになっていたし、彼を引き取ったことを後悔してはいなかった。もちろん完璧なわけではない。彼は怠け癖があり、短気で、何事も自分の思い通りにさせたがった。たまに反抗的になるときもあった。そして、使用人、特に女中に対して偉そうにする傾向があった。おそらく生まれてから10年近く、インドで現地の使用人と関わってきたからだろう。
日々は瞬く間に過ぎ去った。猟銃を撃ち、狩りをして、時折一晩街に繰り出す。10月末までそのような暮らしが続いた後、僕は新年度からフランクを学校に通わせることに決めた。彼を手放したくはなかったが、2、3人の友人と地中海をヨットで旅する以前からの約束があったのだ。1月の初めには出航予定だ。
辛い気持ちにさせるかもと思い、学校に送ることはフランクには言っていなかった。家で塞ぎこまれたくもなかった。
僕はこのところ、彼の将来にとっていいことは何だろうかと考えていた。そしてこれまでのように好き勝手させておくのは間違っているのではと思い当たった。「小人閑居して不善をなす」なんていう諺もあるではないか。こうして僕は彼に毎日一定時間、勉強に取り組ませることに決めた。
僕はすぐに自分の古い教科書をあれこれ探し出し、昼食時にフランクにプランを伝えた。今後は毎日数時間勉強すること。さらに、複数科目の学習と演習問題をすること。そして夕方、僕が帰宅した後に、対象科目をテストすること。彼は僕の話を聞き、驚いて、またいくらかしょげているようだった。だが、僕の選んだ勉強には取り組むと言ってくれた。
次の朝、猟に出かける前に僕はいくつかの課題を彼に出し、図書室で勉強するように言った。そして作業に集中して、全部の学習が終わるまで外に出ないよう伝えた。僕は猟犬と大いに駆け回り、夜7時になるまで帰らなかった。夕食が終わり葉巻に火をつけるとすぐに、僕はフランクに教科書と問題用紙を持ってこさせ、テストをして、勉強内容に目を通した。彼は全ての課題をとても良くこなしていた。
そのあとは彼が寝る時間まで、おしゃべりをしたり、チェッカーで対戦したりした。
しばらくは全てが上手く回っていた。しかし、彼は僕が出す日課に不満を持ち始めたようだった。練習問題はミスだらけ、課題も完璧とは言えないできだったので、何度も叱らなくてはいけなくなった。その度に彼は申し訳なさそうに、もっとまじめになると約束した。しかし数日するとまた怠けて不注意に戻ってしまう。そしてついにはあからさま反抗するようになってきた。
こうして、僕は彼に対してもっと厳しい手段をとるべきだという結論にたどり着いた。彼の好き勝手にさせるわけにはいかない。僕はそれなりに規律正しい人間だったし、体罰も有効だと信じていた。さらに言えば、世の少年はたまには鞭を食らうべきだと考えていた。自分がイートン校にいた頃はしょっちゅう鞭を受けていたし、そのような罰は間違いなく自分のためになった。
そんなわけで、彼がいつもより怠けていたある日の夕方、僕はきっぱりと言い渡した。
「このところ、課題が適当過ぎじゃないかな。それに今日は勉強をする気があるようには見えない。がっかりだよ。もしもっと精を出して課題に取り組まないなら、鞭でお仕置きをしなくちゃいけない」
彼は真っ赤になって恐る恐る僕を見つめ、言った。
「ご、ごめんなさい、怒らせてしまいました。最近怠けていたことはわかってます。でもこれからは頑張ります。本当です。だから鞭は勘弁してください」と、彼は必死に言った。
「それは君次第だ。今後も勉強に精を出さないようであれば、間違いなく樺鞭で打つことになるだろうね」
彼は身震いして手を強く握りしめた。
「今まで鞭で打たれたことは?」と僕は聞いた。
頬の色が濃くなり、彼は目を伏せた。少しのためらいの後、低い声で答えた。
「いえ、鞭打たれたことはないです。ただ、あの―」
彼は舌先までその名前を出しかけて、思いとどまった。彼は続けた。
「あの一緒に住んでいた女性に、3回ほどお尻ペンペンを受けました。私にあることを強要しようとしてそれ拒んだので、酷い扱いを受けたとお話したと思いますが」
僕は笑ってしまった。
「お尻ペンペン? レディにそんなことされるほど情けないやつだとは思わなかったぞ。もうすぐ15歳なんだろ?」
彼の顔はより赤みを帯びた。居心地が悪そうに椅子の上で体を動かし、口ごもりながら言った。
「あ、あなたは分かってらっしゃらないのです。そうされる他なかったんです。2人も女性がいて、私は……」
彼は言葉を止めた。両手を握りしめ、見るからに惨めでおろおろしていた。僕はまた笑った。
「いや、もうそれ以上は大丈夫だ」と言い、本を手に取り読み始めた。彼もまた本をめくり始めたが、そわそわして落ち着かないようだった。しばらくして、彼は「おやすみなさい」と挨拶をして、ベッドに向かった。
フランク君は鞭の脅しに完全にびびってしまったようだ。そんなことを言われるとは全く思っていなかったようで、その後数日間は、僕をびくびくしながら見ていた。
だが恐怖が少しずつ薄れていくと、またあれこれ問題を起こすようになった。わがままにふるまい、感情の赴くままになった。元気いっぱいで、おしゃべりな時もあれば、すぐに不機嫌になりふさぎ込むこともあった。よく反抗的な態度を取ったし、たまに癇癪も起こした。
なぜそうなるのか理解できなかった。彼の態度は面倒臭く、まさに悩みの種だった。一応、やらかす度に申し訳なさそうにしているとはいえ、目を覚ましてやるためにも、鞭の痛みを知ってもらうのがいいかもしれない。だから僕は、次に彼が悪さをしたら鞭で打ち据えてやることに決めた。
次の週が終わる前に、彼は鞭を食らうことになった。
彼は僕と違って綺麗な字を書く。ある朝、書類の写しが必要になった。僕は彼に原稿を渡し、可能な限り早く綺麗に清書してくれとお願いした。午後には投函したいのだ。そんなに大変な仕事ではない。1時間で済ませるように言った。
1時間経ったころ、僕は図書室に用意されているであろう写しを取りに行った。しかし彼は部屋にいなかった。作業は手を付けられてさえなかった。机の上には原稿と真っ白な用紙が置いてあるだけだった。
僕は頭に来た。そして彼が戻り次第、鞭打ちを行うことを決めた。鞭はなかったが、庭には何本かの白樺の木が育っていた。僕は外に出て長くしなやかな、若く青々とした小枝をいくらか切り取った。すぐに素晴らしい鞭が出来上がった。しなやかさを見るために宙で振り下ろし、心の中で「フランシス君、こいつが君の尻を腫れ上がらせるぞ」と思った。図書室に戻った後は、鞭は引き出しにしまった。その後は面白そうな小説を手に取り、暖炉の横の椅子にゆったりと腰を下ろして読み始めた。
1時間後くらいにフランクは部屋に入ってきた。僕は本を置き、椅子から立ち上がった。
「どうして原稿を写していないんだ?」
彼が僕の前にやって来ると、僕は正面から見据えて厳しくいった。
「あー、ちょっと気分が乗らなくて」と彼は軽く答えた。
驚いた。こんな図々しく口答えされたのは今回が初めてだ。
「わざとやらなかったんだな。しかもそんな言い方をするとは。これはお仕置きだな」
僕は怒りながら、引き出しから鞭を取り出し、彼に見えるように振り上げた。彼はそれを見て驚き、慄いた。顔はみるみる赤くなり震え始めた。
「そ、そんな、ぶたないでください! どうかお願いです!」
彼は叫んだ。涙があふれ始め、両手を懇願するように僕の方に差し出した。
「ズボンを下ろしなさい。ソファの端にうつぶせになるように」僕はきっぱり言った。
「待って、待って、待って」彼は泣いた。「お仕置きを受けるだけのことをしたとは思います。でもどうか、鞭は勘弁してください。どうかそれ以外のお仕置きを」
「それ以外のお仕置きなどない。すぐにズボンを下ろすんだ。そんな意気地なしだとは思わなかったぞ」
「意気地なしではないです。痛みも怖くないです。耐えられます。でもあなたの前でズボンを下ろすなんて嫌です」
彼は泣きじゃくった。
「馬鹿言うな! 例の、女性に尻をぶたれた時はズボンを脱がされたんだろう? 男なんだから、女の前でズボンを脱がされる恥ずかしさに比べたら、僕に見られることくらいなんということもないだろうが。さあ、ボタンを外せ! ぐずぐずするな!」
「ズボンは許してください」
彼は懇願するように言った。僕はもう限界だった。
「もし今すぐに従わないようなら、ウィルソンを呼んでズボンを下ろさせ、彼に君を背負わせて尻を鞭打つからな」と私は大声で言った。
「そ、それはやめてください。やめてください」
恐怖を顔に浮かべ、ふるえる声で彼は泣き叫んだ。
「ズボンを、下ろしますから」
彼は少しわきを向くと、震える指でサスペンダーを外し、ボタンを外すと、ズボンは膝までずり落ちた。それから彼は、ソファの端にうつ伏せになった。両手は一方の床に着き、足のつま先はもう片方の床に着いた。体は山なりになり、結果として尻が鞭を受けるのに絶好の高さに持ち上げられた。どうして彼がズボンを脱ぐだけでこんなに騒ぐのか、さっぱりわからなかった。なんてバカみたいなんだ。
僕はソファの端に立って彼のシャツの端をまくり、肌着もたくし上げた。彼は尻を丸出しにされた瞬間、むせぶような泣き声を上げて、真っ赤になった顔を両手で覆った。震えが彼の全身を走った。
「じゃあ君がどれだけ勇敢に罰を受けるか、見せてくれ。ソファから起き上がろうとするんじゃないぞ。手でかばおうとするのもダメだ」
絶体絶命の尻の上で、僕は鞭を振って音を鳴らした。来るべき痛みの恐怖で、尻肉が一気に引き締められる。
僕は彼の尻を9発打った。そこまで強くはないやつをだ。とはいっても、彼の肌は繊細で、尻には十分な痕ができ、いたるところが赤黒くなっていた。
彼は尻を打たれる度に顔をしかめ、腰を左右に捩じった。痛みで声を上げ、涙が頬を伝った。しかし、彼は歯を食いしばって、一度も叫び声を上げなかった。手で尻をかばおうともしなかった。実際、人生初の鞭の痛みであることを考慮すると、勇敢に罰を受けたと言えるだろう。彼は全然臆病者ではなかったのだ。
僕はフランクに、立って服を着て部屋に戻るように言った。彼は起き上がると、目をそらしながら片手でズボンを上げ、もう片方の手で涙を拭った。それから、ボタンを留め、顔にハンカチを当てて、すすり泣きながら部屋を出て行った。
僕は鞭を置くと、近所に顔を出すために屋敷を出た。
次にフランクを見たのは夕食になってからだった。彼は、僕の正面の席に着くや否や、僕の顔を恥ずかしそうにちらりと見て、顔全体を赤く染めた。執事が部屋からいなくなった際に、僕は笑いながら言った。
「まあ、フランク、尻が痛いのは分かるけど、そこまで恥ずかしがることはないだろ。弱っちいやつだな。君は別に、鞭打たれた史上初の少年じゃない。男の子ってのはよく鞭を食らうもんなんだ。必要なことだ。僕だって子供のころはしょっちゅうぶたれたさ。慣れてしまえば大したことないさ」
彼は身震いして「うう、そうなんですか?」と、とても疑わしそうに言うと、また食事に戻った。僕は彼の言い方に吹き出してしまったが、あまりにも落ち込んで惨めなもんだから、1杯ワインを注いでやった。
食事が終わると、僕は椅子を暖炉の近くに引きずっていき、葉巻に火をつけた。フランクもいつも通り近くにやってきて座ったが、何も言わなかった。僕は彼が元気になって口を開くまで、話しかけた。彼は不機嫌なわけでもなく、僕を恨んでいるわけでもなさそうだった。
少しの静寂の後、彼は突然、またもや顔を赤く染め、僕に尋ねた。
「女の子でもよく鞭で打たれるんでしょうか?」
「そこまで頻繁にはないんじゃないかな」
僕は笑いながら答えた。
「でも、母親や家庭教師から鞭を食らっている女の子もいっぱいいるよ」
「じゃあ、男の人に鞭で打たれた女の子を誰か知っていますか?」と彼は続けた。
「うーん、男に鞭打たれた女の子を実際に知ってはいないな。でも別に珍しいことではないと聞いてはいるよ。娘を鞭打つ父親だって普通にいるだろう」
僕の返事を聞いて、彼はなんだかほっとしたようだった。それ以上の質問はなかった。彼は座って暖炉の火を見つめながら考えに耽っていた。それ以上の会話をしたさそうなわけでもなく、今日は早めに寝室へと向かって行った。
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