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【小説】『従妹のオードリー』第一章 (HandPrince)

小さな従妹のオードリーと突然一緒に住むことになった、僕。最初はオードリーを疎ましく思っていたものの、彼女が自分のお母さんから「おしりペンペン」を受けていることを知ったとたん、状況が一変する。

スパンキングを夢見る少年の策略と、おちゃめな従妹が織りなすホームストーリー。

本作品は原作者から許可を得て独自に日本語訳及び公開しているものです。This story is translated and posted with permission from the author. (The Handprints Spanking Stories Page)


不公平だ! 不公平だよ!

 朝からずっと僕は、本当のぼくの部屋からパパと一緒に運び出した、持ち物を詰めこんだ箱を見つめ、ふさぎ込んでいた。僕の部屋の行く末を思って。あのベッツィおばさんに部屋を空け渡すことになっちゃったんだ。

 遅かれ早かれ、持ち物を取り出して、この部屋に馴染むべきだって言うのは分かっていた。でもそれって僕が、この取り決めがもうずっと続くことを認めたことになっちゃうでしょ。ベッツィおばさんが看護師の資格を取るまでの2年間ここに住むだけじゃない。おばさんの娘であるオードリーも一緒なんだ。この家の子供は、もう僕だけじゃなくなっちゃう。

 ノックの音が聞こえた。「はい」と僕は不機嫌そうに声を出す。お母さんが部屋に入って来て、ベッドに腰かけこちら向き直ったけど、僕は目を合わせないようにした。

「スティーブン」とママは切り出したけど、考えをまとめるかのように少し間を空けた。それから深く息をして、「スティーブン、ベッツィおばさんのために部屋を空けるのが嫌なことはわかるわ。みんなが新しい環境に慣れる必要があるの。でもお願いだから—」

「ママたちは何に慣れるのさ!? 」僕は声を荒げて問い詰めた。「自分の部屋を諦めたのは僕だけじゃないかよ!」

「スティーブン!」ママは目を光らせて鋭い口調で言った。「もうあなたは12歳でしょう。もう相応のふるまいをしなきゃだめよ。時には自分のことは置いて、他の人のことも考えなさい!」それから間を置いて、もう一度深呼吸した。たぶん心の中で10秒数えたんだ。「スティーブン、あなたは下の部屋からここに引っ越すことを受け入れるだけ。でもね、ベッツィおばさんと、かわいそうなオードリーは、ジャックおじさんが亡くなったことを受け入れなきゃならないの。もし仮にあなたが—」ママは急に話をやめ、唇を噛んだ。不安げな表情が一瞬顔に浮かんだけど、すぐに元の落ち着きが戻って来た。

 話題を変えながら、ちょっと話を急ぐ感じでママは続けた。「それに2人は、1,200マイルも遠くからの引っ越しも受け入れなくちゃならないの。元の家に住み続ける余裕がないからよ。ベッツィおばさんは看護学校で勉強することを受け入れなきゃならないし、卒業してからも初めて生活のためにお金を稼ぐことを受け入れなくちゃならない。オードリーも忘れちゃだめよ。ここにはあの子のお友達がいない。知らない、新しい学校に行かなきゃならないし、知らない家に住まなきゃならない。あの子が何に慣れなきゃいけないのか、考えてみなさい」

 ママが入ってくる前までは、僕は最悪な気分だった。でも、今は最悪な気分なだけじゃなく、最悪な気分であることが最悪になった。どうも、ママ…… それでも僕は、ママが僕の心に呼び起こすことに成功した罪悪感を全力で隠すことにした。

「あんな手に負えないオードリーと過ごすのなんて嫌だよ」と、僕はむすっとして言った。「絶対僕が行くところ行くところ付きまとうし、いつもうちに来るときみたいに、僕は一人になれなくなる。しかも、いっつも僕の物を自分の物だって言い張るしさ」

「ほら、スティーブン」ママは口を挟んだ。「自分の従妹をそんな言い方するんじゃないの。明るい女の子じゃないの。だいたいもう5年も会っていないでしょ。今ならもう、一人にしてほしいとか、あなたの物を持って行かないでとか、ちゃんと伝えれば大丈夫よ。あっちも、もう3歳じゃなく8歳なんだから。だからあの子にもチャンスをあげてちょうだい。それからスティーブン」とママは優しい声になり、「あの子に優しくしてあげて。この2カ月は本当に大変だったの。お願いだから、あの子の人生を今以上に不幸せにしないであげてちょうだい。わかった?」

 僕は観念のため息をついた。「うん…… ママ」

「じゃあスティーブン、もし今持ち物を出さないのなら、」ちらかっている山積みの箱に顔をしかめながら、ママは言った。「みんながいるリビングに降りてきましょう」僕は呻き声を上げた。「ほら、スティーブン、いらっしゃい。下に降りて来なさいよ」

「わ、わかったよ」僕はそう言うと、コミックを1冊掴み、ママを待たずに急ぎ足で部屋から出た。リビングに降りると、僕は大きなソファの端っこでうずくまって、スーパーマンの新刊に集中した。可能な限り他の人と関わらないように努力しながら。パパは新聞を読んでいた。オードリーは部屋の反対側の小さなソファで、持ってきた人形で遊んでいた。ベッツィおばさんは冷静で威厳のある38歳の女性だ。きりっとした姿勢、恰幅の良い体、そして長く暗い赤色の髪の毛。彼女は折り畳み式のテーブルに向かって、何かの用紙に記入をしていた。たぶん看護学校のだろう。あるいはオードリーの学校のかもしれない。

「夕飯がもうできたわよー」ママがキッチンから出てきた。

「オードリー」ベッツィおばさんが言った。「マージョリーおばさんがテーブルを準備するのを手伝いなさい」

「ママ、もうちょっと」オードリーが答えた。

「もうちょっとじゃないの、今すぐ。マージョリーおばさんが教えてくれるから」

「もおおお、ママ…… 遊んでるとこなのに」

「オードリー?」ベッツィおばさんはちょっと軽口をたたく感じで言った。「おしりペンペンされたいの?」その言葉を聞いた瞬間、僕の体の中にドキッとした感覚が通り抜けた。オードリーがおばさんにおしりペンペンされる? オードリーは母親の言葉に、わずかに身をこわばらせた。でもその後、ちょっとすねた表情をしながらも、迷うことなくキッチンに走っていった。

 僕はいまだにコミックを読むふりをしていたけど、もはや内容は頭に入っていなかった。僕の心の中では、オードリーがママの膝の上でおしりペンペンを受けている映像が流れていた。僕は日頃から、密かにお尻叩きというものに魅力を感じていた。自分で受けたことはないけれども。おしりペンペンのシーンを求めて、毎日のように四コマ欄を読み漁り、「spank」の定義を暗記しちゃった後もずっと辞書で単語を引いていた。兄弟も姉妹もいなかったので、他の子どもがお尻を叩かれているのも見たことがない。そうだったらいいなあとよく思っていたけど。お尻叩きの罰は僕の学校でも行われていた。でもそれができるのは校長だけで、しかも個室でのみだった。僕たちの広くて古いヴィクトリア朝スタイルの家は30メートル四方の区画に立っているので、隣の家のお仕置きの音なんて聞こえなし、見るなんてもってのほかだ。まあ、スーパーとかそのほかの場所で、何回か子供がお母さんにお尻をひっぱたかれているのは見たことがあるよ。でも僕は、本物を見たいと望んでいたんだ。つまり、昔ながらの、膝の上でのお尻叩きだ。そして今、オードリーとベッツィおばさんが一緒に住んでいる。もしかして、ずっと望んでいた夢がかなうかも!

 オードリーが隣のダイニングルームで、お皿を並べるためにテーブルの周りをバタバタしているのを見ながら、僕の興奮した心は次々と色々なストーリーを作り上げていた。もし、お皿を落として割れちゃったら、ベッツィおばさんは彼女におしりペンペンするかな? もし運んでいる途中に転んでカーペットにぶちまけちゃったら? ベッツィおばさんはその場で彼女を膝の上に載せて、お尻を叩くかもしれない。ベッツィおばさんが小さなお尻を何度も何度もひっぱたき、オードリーは泣きながら手で目を拭く。素敵な眺めだろうなあ! オードリーがソースの器を食卓へ運んでくる間、僕は息をひそめていた。でも、彼女は真面目なことに、丁寧にそれを運んでミスることなくテーブルに置いた。食事の間、僕は食卓を挟んで向かいにいる従妹をチラ見し続けた。最初彼女は、僕からの注目に気付かずにフライドポテトをがつがつ口に突っ込んでいたが、こちらに恥ずかしそうな笑顔を向けたので僕は視線をそらした。オードリーはとってもかわいい女の子に成長していた。お母さんと同じ赤みがかった茶色い髪、少し上向きの鼻と明るい茶色の目。まっすぐした姿勢もお母さん譲りだった。遅かれ早かれ、彼女は何かしらやらかしてベッツィおばさんからおしりペンペンを受けることになるんだ。もしかしたら、彼女が問題を引き起こすようにする方法が何かあるかも? そう、その時、僕がその場にいるためにも。

「なんだ、今日は腹が減っていないのか」パパが言った。「体調でも悪いのか?」

「いや」僕は小さなハンバーグを無理やりほおばりながら、肩をすくめた。

「風邪をひかないように、お豆も食べなさい」とママが促す。

 その日の夜、僕は食事が終わると新しい自分の部屋に戻り、家具を並べたり、箱から持ち物を取り出したりし始めた。実はこの部屋からオードリーの部屋につながるドアが存在する。僕が覚えている限り、長い間それは塗り固めて閉じられてしまっていた。それと、この部屋にはもちろん廊下へのドアはあるけど、その反対側の壁側には、今は物置として使っている、かつて使用人が住み込んでいた部屋が存在するんだ。昔使用人が使用していた裏階段がその隣の部屋につながっている。こいつは使える。もはやほとんど誰も使っていない、キッチンまで行ける僕だけの階段だ。この3つのドアの上には飾り窓がはめられている。もともと建てられた時は、この部屋は居間であって、ベッドルームとして使うのは想定していなかったんだろう。この部屋の、オードリーの部屋につながる固められたドアがある部分はくぼんで、スペースになっていた。僕はそこに何とかして小さな棚を押し込み、そしてスペースの使い方に関する自分の頭の冴え具合に嬉しくなりながらも、ベッドサイドランプをその上に置いた。ベッドの頭側も、オードリーの部屋への封印されたドアがある壁に向いているので、これで読書灯には困らない。ベッドの反対側に模型を作ったり宿題をしたりする机を並べた。それから、僕は慎重に、大事な模型のコレクションを開封し始めた。

「オ~ドリ~」ベッツィおばさんの歌うような声が、階下から聞こえてきた。「お休みの時間よ!」「わかったママ」と隣の部屋から返事が聞こえる。そしてすぐに、廊下の反対側の洗面所から、水の流れる音や、歯を磨く音が聞こえた。

 僕の恐竜とレーサーの模型は、窓枠のところ、棚や机、そのほか平らな場所に並べていった。でも飛行機の模型はもちろん空中を飛んでなくちゃね。僕は机の上に椅子を置き、その上に立って、留め金を天井に打ち込んでいた。ここからひもで飛行機を吊るすんだ。その時ドアからノックの音が聞こえた。「どうぞ」と僕。きっとハンマーでドンドン言わせているのに文句をいうため、ママがやってきたんだろうな。ところが入ってきたのは、夏用の麻のパジャマを着たオードリーだった。結構かわいかった。もし羽でも生えていたら、クリスマスカードで赤ちゃんのイエスの周りを飛びまわっている天使そっくりに違いない。と思ったのもつかの間、パジャマのままママの膝の上に載せられて、おしりペンペンをされているオードリーの映像に切り替わった。そして僕がその次に考えたことは「出て行けよ!」

 「スティーブ、何しているの?」オードリーは丁寧に聞いてきた。「知ったことじゃないだろ! 出て行けよ!」彼女の顔が落ち込んだ。しゅんとした様子で向きを変え、静かに部屋から出て後ろ手でドアを閉めた。彼女の顔に浮かんだ、悲しいながらもちょっとすねた表情は、さっきベッツィおばさんからおしりペンペンされたいのかと聞かれた時に浮かべたものと同じものだと気づいた。留め金への最後のハンマーを打ち込むと、僕の第一次大戦期の三葉機をひもで吊るし上げた。他の飛行機も吊るすために一度下に降りようとしたけど、考えた結果、肘掛椅子に飛び降りた。突然、僕は作業なんてどうでもよくなった。オードリーをどうやって罠にはめるか考えれば考えるほど、なんだかみすぼらしい気持ちになっていく。笑えるのは、それは別にママが僕に優しくしろと言い聞かせてきたからじゃない。あの子の、悲しげな目が、本当に僕は情けない奴だと思わせたんだ。しばらくして、僕はやり直す決意をした。「オードリー?」僕は廊下から、暗くなったドアの向こうにささやきかけた。「まだ起きてるかい?」シーツがガサガサと、ベッドのスプリングがきしむ音が聞こえた。「ふむう……」と返事が聞こえた。「僕の部屋においでよ。模型を見せてあげる」「やった!」オードリーはふんわりした高い声で答えると、ベッドから廊下に飛び出て、僕の部屋に入ってきた。

「すんごおい!」彼女は、中に入って部屋を見渡した瞬間、感嘆の声を上げた。「これ全部スティーブが作ったの?」

「もちろんさ!」僕は誇らしげに答えた。

「へえええ、すごいなあ!わあ、これすごい。飛行機、本当に飛んでるみたい! スティーブ、なんでこの飛行機羽が3つあるの?」

「”6つ”だよ」僕は知識をひけらかすかのように訂正した。「三葉機って言う、もう製造されていない飛行機だよ。このもう一枚の羽は上向きの力を得るのに必要なんだ、なぜかというと—」

「あー! スティーブ、これティラノサウルスでしょ!?」彼女は息を飲みながら、窓辺の太古の肉食恐竜を指をさした。僕が「そうだよ」とうなずくと、彼女は興味津々な目をして近くに飛んでいった。「うわあ、私、恐竜が紫とオレンジだったなんて知らなかった!」

「実際は、」僕は、自分が頭がよく偉い人になった気がしながら、説明を続けた。「恐竜がどんな色だったかは誰もわからないんだ。僕たちは彼らの骨しか手に入らない。だって、ずっとずっと前に絶滅しちゃったから」

「どのくらい前?」

「6千500万年!」

「それってそんなに昔なの?」

「じゃあ、6千500万秒がどのくらい長いかわかるかな?」僕が尋ねると、茶色の目を大きく見開き、彼女は首を振った。「わかんない」「いいかいオードリー、6千500万秒は、大体2年間なんだ!」

「おおおお!」と彼女は口に出して手の平を叩き合わせた。それから率直で、子供っぽい賞賛の目で僕を見つめながら、勢いよく言った。「スティーブはいろんなこと知ってるんだね!」僕に対する温かい笑顔の後、彼女は視線をもう一度恐竜の模型に向けた。口をあんぐり開けながら、細かいところまで感心しているようだった。自分自身全く気付いていなかったけど、僕は夢中になっていた。小さな女の子の賞賛で心が打ち解けないほど、僕の心は冷たくない。ちょっとした驚きを込めながら、彼女は聞いてきた。「この目はどうやって白く塗ったの? こんなに小っちゃいのに! とっても大変そう! スティーブってほんと—」

「オードリー?! オードリー!! どこに行ったの!」ベッツィおばさんの怒った声が外の廊下から聞こえてきた。

 オードリーは、ひっと声を上げると飛んで行ってドアを開けた。「こ、ここだよ、ママ。ただちょっと—」

「なーにーをーしーてーるーのー、ベッドから抜け出して!!!」大きく強い声で、一つ一つ鋭く言葉を発しながらベッツィおばさんは問い詰めた。「スティーブがただ部屋を、み、見せてくれるって、ママ、私—」

「この時間はベッドにいなきゃいけないって、あなたは知ってるでしょ、悪い子ね!」ベッツィおばさんは僕の部屋のドアの前に立って、強調するように指を振りながら、怯えている娘を見下ろした。「罰として、おしりペンペンです、いいわね!」

「いや、ママ、いや!」オードリーはどもりながら言った。目は一気に涙で溢れ、反射的に後ろで両手を組み合わせて、お尻を守った。「お願い、ママ、ごめんなさい。そういうつもりじゃ—」

「口を閉じなさい!」ベッツィおばさんはかんかんだった。「あんたは悪い子だった。だからお仕置きが必要なの! 部屋に戻りなさい!」

僕が何年も待ち焦がれていたチャンスが、毎晩ずっと、いついかなる時も思い続けていたチャンスが、ここにあった。だがしかし、考えるより早く僕は口走った。「おねがい、僕を怒らないでベッツィおばさん!」彼女のもとに寄りながら、「おばさんのルールを破るつもりなんて、ほんとそんなつもりじゃなかったんだよ!」

「え……?」おばさんは困惑した様子で顔をしかめながら僕をみて言った。

「もう2度としないから、約束するから!」

「何を……もうしないって?」彼女はいらいらしながら尋ねた。

「今みたいにオードリーをベッドから連れ出さないって約束するよ! この子に僕の部屋においでって言ったんだ。そしたら言ったとおりについてきた! そうだよね、オードリー?」ちょっとの間、ぽかんと僕を見つめた後、オードリーは慌ててお母さんに向き直って、強くうなずいた「うん」「ベッツィおばさん、僕を怒らないで」僕は続けた。「反省したよ、本当だよ!」

 おばさんはちょっとひるみながらも、いぶかし気に僕をしばらく見据え、それからオードリーの方を向いた。彼女は息を飲んで、お母さんの視線から逃れるためうつむいた。それからおばさんはこちらに向き直って言った。「そうね、スティーブン、本当に反省してくれたなら嬉しいわね。オードリーには年上の人の言うことは聞くように教えているけど、私のルールを破ることになるときは話が違う。あなたのお母さんとも話さないとね。オードリーのベッドの時間は午後8時半。それ以降はベッドから出ちゃいけないの。わかったかしら?」僕が全力で合意を示すと、彼女はオードリーに向かいなおった。「私たちは新しい家に住んでいるかもしれない。でも私があなたのお母さんで、あなたは私のルールに従う必要があるのよ。スティーブが何を言おうと関係ない。の言うことを聞きなさい! 分かった?」

「はい、ママ!」オードリーは懸命にお母さんを見上げて言った。

「じゃあ」ベッツィおばさんは声をやわらげ、話を終わらせた。「ベッドに向かいなさい」と指をさっと動かす。オードリーは煙のように消え失せた。おばさんは僕を見て、軽蔑した感じで鼻を鳴らし、何も言わずに廊下に出て行った。

 僕はドアを半開きにしたまま、部屋の電気を消した。それから考えごとをしながらベッドに横たわった。ついに本物のおしりペンペンを目にする機会がやって来た。でも、僕はそれを阻止した。おしりペンペンはまだ見たいと思っているけど、それは他の子でも、僕のかわいい従妹じゃなくてもいいじゃん! ドア口にぼんやりとしたシルエットが浮かんだ。「入ってもいい?」 僕が同意の言葉を口にするや否や、小さな足が駆ける柔らかい音が聞こえ、布団がごそごそいったかと思うと、驚いたことにオードリーが僕のベッドに這い登ってきた。彼女は僕の首に腕を回すと、ほっぺにキスをした。彼女はすぐに起き上がってシーツの上に跪くと、先ほどソースの器を運んでいたときと同じ、真剣な顔をして僕を見つめた。「ありがとう」と彼女はゆっくり言った。その目は本気で真面目だった。運よく部屋が暗かったので、僕の真っ赤になった顔は見られなかっただろう。「ああマジかよ」僕はつい大きな声を出した。「シー!」彼女は僕を制して、神経質そうに肩越しに廊下を見た。僕は腕を伸ばし、彼女の肩を愛情を持って握った。すると、すぐに彼女はその腕をつかんで、そのまま抱きしめた。両腕で僕の腕を抱いたまま、オードリーは人形をあやすかのように左右にゆっくり体を揺らし始めた。ぎゅっと目を閉じ、ほほを僕の手に摺り付けながら。

「オードリー」僕はささやいた。「明日学校から帰ってきたら、庭の秘密の場所を教えてあげるよ!」

「やった!」それから彼女は、僕の腕を体の横に戻して、ささやいた。「そろそろ行かなきゃ。おやすみ、スティーブ!」彼女は、フクロウの羽音みたいに静かにベッドから抜け出し、微かな生地のすれる音と共に、つま先歩きで廊下に出て自分の部屋に戻っていった。僕は一人っ子であることを気に病んだことはなかった。特に、友達から偉そうな兄や姉、うるさくて面倒な弟や妹に対する文句を聞いた時は。でも、小さい妹を持つことがこんなにも素敵だなんて知っていたら、もっと前にママにお願いしていたのにな!

 僕は服も着替えずに、眠りこんでしまった。その夜、オードリーが三畳紀後期のジャングルに迷い込んだ夢を見た。突然、よだれを垂らした紫とオレンジのT-Rexが現れた。彼女を追い詰め、舌なめずりをしている! その時、間一髪で、第一次世界大戦の空の英雄・スティーブン大尉が三葉機で急降下。恐竜は逃げていき、オードリーは安全な所へ助け出された。全ては彼女の感謝を聞くために。

続く


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