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【小説】『従妹のオードリー』第二章 (HandPrince)
お仕置き騒動の次の日、従妹のオードリーに秘密の梨の木を教えてあげる、僕。オードリーと協力しながら頑張って梨を手に入れようとするが、上手くいかない。2人は梨を手に入れられるのか。
そして、本人の知らないところで、オードリーにおしりペンペンの魔の手が迫る!
【第一章はこちら】
本作品は原作者から許可を得て独自に日本語訳及び公開しているものです。This story is translated and posted with permission from the author. (The Handprints Spanking Stories Page)
「ちょっと、スティーブ! ああ、気をつけて! スティーブ…… スティーブ、落ちないでね!」
「うおっと、心配いらないよ、オードリー」僕は、実際よりも自信なさげに聞こえるよう口ごもった。「うん…… 大丈夫だと思う…… だから…… 要するに僕は…… 落ちない、たぶん!!」
「ああああ!」 不安な少女は1メートル下からこちらを見上げ、うめき声を上げた。爪を唇に押し当て、息をこらしていた。僕は笑いを押し殺し、我が家の庭の北の端に生えている古い梨の木の、次の高さにある枝にそっとよじ登った。正直この木は、一番細い枝々までほとんど暗記してしまうほど、何度も登ったことがある。でも、こんな夢中に、熱心に見てくれる観客がいたのは初めてだ。
「スティーブ?」彼女は声を上げた。「もう降りてこようよ! 梨が好きって言ったのはウソだから! 別に私いらない、あんなゲロまずいもの!」
お、おう。2日前の夕飯の前にそのゲロまずを、食事前にフルーツサラダからほとんどつまみ食いして、僕のママから叱られたんじゃなかったっけ。ほんの10分前に、この木の上の方になっている、大きく熟れたいくつもの梨を見てこの子は、これ食べたい、と所望した。彼女は思ってもなかっただろう。それは僕への命令も同然だということを。「梨はゲロまずいのか?」僕は大声で調子を合わせた。「それはマトソン家の梨を食べたことがないからだな! マトソン梨に勝てるものはないぞ! だから君に梨を食べさせるため、命の危険を冒す覚悟だ!」
「いやああああ!」下の方から取り乱した叫びが聞こえる。お望みの実のなる枝は目と鼻の先だ。ほぼほぼ垂直に立っている幹に脚でしがみ付きつつも、腕の力でゆっくり体を引き上げた。僕はもともと梨のなっている枝を揺すって、下に落とそうと思っていた。でも自分の親指ほどの枯れた小さな枝を見つけた時、ちょっといじわるな気持ちと思い付きが一度に浮かんできた。その、皮がもう剥がれた灰色の枝を掴むと、僕は力強くそれを引っ張り、まるで銃声みたにパンッという音をさせて手の中で折った。そして「うわあああああ!」と僕は落ちて死ぬかのように叫んだ。下からも叫び声が上がる。それと共に、オードリーがその光景を目で見るのを恐れて、両手で目をふさぎ、肩を縮めた。僕が枝を振り回しながら笑い声を上げると、彼女は僕を見上げた。「スティーブ、怖がらせないでよ!」彼女は地団太を踏んだ。「言いつけてやる!」と言いつつも、彼女はその場から動かず、誰かに何かを言いに行く気配も見せなかった。僕はすぐに謝りながらも、心の中でこの成功に笑顔を浮かべた。さて、この手の枯れ枝の力で、梨のやつを追い詰めてやろう。
「オードリー、キャッチするんだぞ!」僕は大声で伝え、丸々した梨を前後に揺すった。オードリーは慌てて口を開けたまま木の下に向かい、キャッチしようと手を差し出した。それから、急降下してくるミサイルを不安と緊張の中で待ち構えていた。「さーあ、いくぞー!」僕は梨が枝から解き放たれると共に朗らかに声を上げた。オードリーの大きく茶色の目は見開かれ、ぎこちなく頭上に腕を伸ばした。その手は梨をキャッチするかのように思えたが、最後の最後で彼女は、落ちてくる梨に怯えて目をつむり身をこわばらせた。梨は敷石に当たり、潰れた。滑らかで柔らかい、熟れた梨だったからなあ。でも、残りがたくさんあるわけじゃないんだ。その時、オードリーがぐちゃっとなった梨を見つめて涙をこぼし始めた。「泣くなよオードリー!」僕は下に向かって声をかけた。「お願いだから泣くなって。まだ梨はあるから。もう一度やってみよう!」でも彼女は悲しみに暮れ、うなだれたまますすり泣いていた。
もう一回やってみようと何度か励ますと、彼女は潤んだ目で僕を見上げて泣き言を言った。「私、取るの下手くそだもん!」そして、前よりもっと泣き始めた。彼女が泣くのを見ているのは辛く、何とかして慰めてやることはできないかと考えた。元々僕が危ないことをしているのを心配していたり、僕が枝を折って驚かせたりしたせいで、心が弱っていたに違いない。僕はかっこいいところを見せつけてヒーローになるつもりだった。でもこのざまだよ! オードリーは自分のせいで僕が命や体の危険を冒していると思い込んでるんだ。うん、この子の「いいお兄ちゃん」になる道はまだまだ遠いな。オードリーの哀れなすすり泣きは、未だに下から聞こえていた。泣き声が少し収まってくると、僕は聞いた。「オードリー、例えば、家に戻って枕カバーを持ってきたらどうかな? 広げて持てば、梨をキャッチしやすいんじゃない? 他にも例えば—」
その時彼女の顔がぱっと明るくなった。「そうだ!」その日は新しい学校の初登校日で、彼女はまだ
「いくぞー!」と言った後、僕はもう一つの緑の実を地面に落下させた。落ちてくる梨から目を離すことなく、オードリーは膝の高さはそのままに右に左にと位置を定めた、そして、ひゅっていう音と共に、梨が緑のコットン・バレー墜落した時には、彼女の両手は白くなるほど強く握られていた。
「キャッチしたじゃん!」僕は舞い上がった。「イェイ、オードリー!」喜びのため息とともに、僕の小さな従妹はその実を目の高さまで持ち上げた。「スティーブ、この子かわいい!」彼女は叫び、ちょっとそれを胸元で抱きしめた後、数メートル先の平らな岩の上に置くと、急いで戻って来て、次の梨が落ちてくるのを待ち構えるかのようにスカートを持って広げた。3つほど落としたけど、彼女は全部キャッチした。木から降りるのは登るのよりも速い。最後にジャンプして硬い地面に着くと、彼女は僕を安心したかのように抱きしめて歓迎し、2つの梨を差し出した。「ホースで洗いに行こうよ!」と彼女は言った。それから僕は残りの梨を抱え、家の裏へと凱旋行進し、戦利品を水で洗った。オードリーは目を閉じて、ソフトで、甘く新鮮な梨の実に噛り付き、喜びでため息と声を漏らした。果汁があごをしたたり落ちたので、ブラウスの袖でそれを拭きとった。それから、もう一度噛り付くところからの繰り返しだ。僕は自分の梨を脇に置き、彼女がおいしい味に夢中で噛り付いている様子を、にこにこしながら眺めていた。僕の視線にも全く気付かない様子だった。
僕はわざとらしくいった。「やっぱ、ゲロまずかい?」
彼女は陽気そうに鼻にしわを寄せながら、食べ始めてから初めて僕を見た。その後ちょっと空を眺めて肩をくすめた後、目をキラキラさせながら、わざとらしく「うーん、こいつはゲロまずっ!」と言って、再びとてもおいしそうに食べ始めた。一つ目の梨を食べ終わって二つ目の梨を数回かじった後、彼女はそれを膝の上にのせ、まるで考えに耽っているような小難しい顔をして聞いてきた。「スティーブ、人間は木よりも頭がいいのかな?」
僕はあまりにも純粋素朴な質問に笑ってしまった。「そうだよオードリー。木はバカだからね。脳みそを持っていないんだ。対して人間は、この世で一番賢い脳みそを持ってる」
「じゃあ」と彼女は続けた。「梨ってどうやってできるの?」
「そうだね」先生役に満足しながら、僕は答える。「もちろん木に生るんだよ。さっき僕らが梨を取ったような木に」
「じゃあ人間は梨を作り出せる?」
「それはできないよ」
「どうして?」
「うーん」僕は急に自分の考えが及ばなくなったことに驚いた。「それは…… だってどうやって作ればいいかわからないから、じゃない?」
「じゃあ」彼女は容赦なく続けた。「木がバカで、人間が賢かったら、木が人間が知らないことを知っているのはおかしくない?」
「う、うー、ああ、あ、見てオードリー!」僕は話題を変えようとして言った。「君のママがこっちに来るよ」午後のテニスクラブから帰ってきたばかりのベッツィおばさんが、白いテニスウェアを来てラケットを持ち、角から現れた。「梨を見せようよ」
「ママ! ママ!」オードリーは声を上げながら、梨を抱えてベッツィおばさんのもとへ駆け出した。「スティーブと何していたと思う? 私たち—」
「何かしら、それは!」ベッツィおばさんが、食べかけの梨をびしっと指差し怒った。オードリーはおばさんの突然の怒りにびっくりして口を開けた。彼女は梨を見て、もう一度自分のママに顔を戻した。唇は何かを言おうとしているけど、言葉になっていない。「誰が、夕飯前に物を食べていいって言ったのかしら?!」と怒鳴るベッツィおばさん。「これがルール違反だって十分わかっているでしょ、あなたって子は!」かわいそうなオードリーは、完全に驚いていた。明らかに、僕らの梨を得るための冒険が、ごはんの間のつまみ食いになるとは思っていなかった様子だった。
「ベッツィおばさん」僕は梨を持ったまま笑顔で近づいて行った。「この梨はあそこの木から取ったんだよ。オードリーが取るのを手伝ってくれたんだ。これはおばさんの分だよ」
「その…… 細菌だらけのゴミを、向こうにやりなさい、スティーブン!」ベッツィおばさんは梨を見ると、鼻にしわを寄せて唾を吐いた。それから僕の方に歩き出すと、獲物にとびかかる前のコブラみたいな目をして僕を見据えた。「そんなことだろうと思ったわ! ここに引っ越してからあんたはオードリーに対して悪い影響しか与えない! 言っておくけど、もう耐えきれないわ!」おばさんは文字通り激しく怒鳴り散らした。僕はそんなこと想定していなかったものだから、とっさに後ずさった。おばさんは、また間を詰めながら吠え続けた。「私は自分の娘を適切な方法で育てているの。生意気で、甘えた、だらしない、躾のなってない、知ったか12歳の小僧が私の選択の邪魔をするなんて許せない!」僕が口を挟もうとすると、彼女は叫んだ。「あなたのお父さんや私があんたの年齢の時、そんなことをしたのなら、1週間は椅子に座れなかっというのに! 昨夜のあんたたちのいたずらの後、あんたのお父さんに、厳しく辛いパドルを食らわせるよう言ったけど、聞く耳を持たなかったわ!」おばさんは、オードリーに顔を戻した。「あんたについては、オードリー」こちらも同じトーンで叫び始めたが、急に思いとどまったように深呼吸をして、いつも通りの声で言った。「私がシャワーを浴びて着替えてくるまで、部屋から出てはいけません。それからあなたの部屋まで上がっていくから、きついおしりペンペンです!」彼女は最後の言葉を強調するかのように、子気味よく手を叩いた。オードリーは梨を取り落し、号泣しながら、庭の道を玄関に向かって駆けて行った。そして、涙を流しながら家の中に消え、運命を待ち受けるべく自分の部屋に戻って行った。ベッツィおばさんは軽蔑の表情で僕を見ながら鼻を鳴らし、踵を返して玄関へと向かって行った。
おばさんの視線が外れると、僕にかかっていた金縛りが解けた。彼女を追いながら僕は言った。「ベッツィおばさん、どうかオードリーにお仕置きしないで。悪いことをしてるつもりはなかったんだ。この梨は特別なもので頑張って取ったんだよ。おばさんは分かってない、僕たちは—」
「いいえ!」彼女は振り返り、顔を数センチという距離まで近づけて叫んだ。「あなたが分かっていないの!! 私やあなたのお母さんがどれだけ頑張って料理を作っているのか、あなたが分かっていないの! 食事前につまみ食いをしたせいで、準備した料理が食べてもらえなかったらどんな気持ちになるか、あなたが分かっていないの!」
「でも、ベッツィおばさん、食べたのはちょっとだけだよ」僕は弱々しく反論した。「どうしてそんなに—」
「もうたくさんよ! あんたの言葉をこれ以上聞きたくなああい!」と、彼女は最後の言葉を感情的に引き伸ばして、唾を吐き捨ててそれ以上何も言わず歩いて行った。何も言えないまま僕は残された。
彼女が大きな石の段を上り、玄関へと消えていくと、僕は言葉の能力を取り戻し、ベッツィおばさんの言い草への反論が心の中に溢れた。でも、もちろん手遅れだ。こんな目に会うことになった僕自身を憎んだ。僕は何度も何度もおばさんのことを回想し直した。なんであんなことを言われなきゃならないんだ! 僕はこの家で生まれ育った。僕はここの床で歩けるようになった。あの人は行く先のない可哀そうな親戚っていうだけじゃないか! 自分を誰だと思っているんだ! ここに引っ越してきて、僕の部屋を奪って、それでいて僕のことをゴミのように言いやがって! 考えれば考えるほど怒りが込み上げて来る。もはや、ベッツィおばさんの言った言葉に怒っているのか、ベッツィおばさんにこんなことを言わせた僕自身に腹が立っているのかもよくわからなくなってきた。だけど僕は、家の中でベッツィおばさんと鉢合わせするリスクを避けるため、庭で座り込んだ。認めたくないけど、おばさんはわざとああ言っていたのだろう。僕は彼女にビクビクしていたし、あの人のもそれを分かっていた。もう今後、これ以上彼女に対抗することが難しくなってしまった。
シャワーを浴びるのに十分な時間が経ったなと思い、僕は静かに勝手口から家に入り、使用人の階段を上って自分の部屋のドアまでやってきた。廊下の先のバスルームのドアの向こうから、ベッツィおばさんのドライヤーの音が聞こえる。隣のオードリーの部屋からは、微かなすすり泣きが聞こえる。僕は何も感じられず、しょげ返り、ぼんやりと宙を見つめた。どうしてここに戻ってきたのかは、実際自分にもよくわからなかった。
続く。