「プリフェクト」って何? 英国の体罰権持ち生徒の方々

イギリスの寄宿学校(Boarding School)における生徒の代表プリフェクト(Prefect、監督生)。現在はともかく、かつては他の生徒を処罰することができた、その強い権力と実態を探っていきます。英国小説や、明治時代にイギリスに渡った日本人の手記なども含めて、見ていきましょう。

吉川

今日は私、海外担当吉川がお供しましょう

目次

プリフェクト(監督生)とは何者なのか

イギリス寄宿学校モノでは、必須の存在であるプリフェクト。強い権限を持ち、スパ小説はもちろん、英国一般作品でもプリフェクトあるところ体罰の香りあり。Wikipediaでも、もちろん言及されています。

They were once allowed to administer school corporal punishment in some schools (now abolished in the UK and several other countries).

学校によっては、彼ら(プリフェクト)に体罰の執行を認めていた。(現在では英国や他の国々では禁止されている)

https://en.wikipedia.org/wiki/Prefect

この、「他の生徒を罰することができる」という権限が、フィクションにおいて、なんかとてつもなく強力な要素であることは、想像に難くないでしょう。生徒だけで社会を構築できます。なんか、よくある日本のフィクションの生徒会みたいなやつですね。

吉川

そりゃ、創作の話でしょう

とはいえ、プリフェクトという言葉はあまり耳にすることもないのではないかと。通例の日本語訳は「監督生」「監督生徒」かと思います。

某英国ファンタジーの寄宿魔法学校でも、プリフェクトは「監督生」という単語をあてられていました。まずは、その魔法学校を一例として、見ていきましょう。大雑把に理解するには、それが一番手っ取り早いです。

某寄宿魔法学校におけるプリフェクト

harry-potter

例に挙げるこのH魔法学校は魔法使い・魔女のための、4つの寮を持つ全寮制の学校です。学年は1年生から7年生まで。寮は仮に、

  • ライオンさん寮
  • アナグマさん寮
  • ワシさん寮
  • ヘビさん寮

としましょう。調べたところ、この学校では以下のルールでプリフェクトが任命されるようです。

  • 5年生の中から、各寮、男子女子1人ずつ任命される。4寮×2人で、毎年8人のプリフェクトが任命される。(任命プロセスそのものは不明)
  • 任命されたプリフェクトは最終学年の7年生まで役職を継続する。
  • よって、8×3学年で24人のプリフェクトが全学に存在する。

この、人気が5年生から7年生まで、というのはH魔法学校特有というわけではなく、ボーディングスクールにおける、プリフェクトのよく見られる形です(違ったらすみません)。

吉川

では、24人のプリフェクトが存在するとして、H魔法学校の全在籍生徒は何人なのでしょう。ちょっとワタシ調べたんですけど明確な数字が存在しないようで。

色々サイトを見ていたら、こういう理屈で600人くらいじゃね? という説がありました。仮に母数が600人だとすると、

全600人÷24人=25人

で、本人を除いて-1すると、1プリフェクトあたり一般生徒は24人。これが100人に1人とかだとアレですが、24人なら、ちょうど学級委員長レベルで、監督するには妥当な人数じゃないですかね。

七峰

うん、よくわからない

続いて、H魔法学校におけるプリフェクトの説明を確認すると……

  • 夜の見回りなどの監督業務を行う
  • 専用のお風呂がある
  • 寮の点数を引くことができる

寮のポイントってのは規則違反生徒に対して「アナグマさん寮マイナス10点」とかいうやつですね。つまり他生徒に対して罰を与える権限があるということです。これが、他のプリフェクトに足しては発動できないとか、自分の寮に対してしか発動できないとか、そもそもそんな権限ない、とか、シリーズ内でブレもあるような説明も見られました。

まあ、このサイトではその正確性はどうでもよいです(作品ファンの方ごめんなさい)。要するに、プリフェクトとは、ただの生徒代表ではなく権限を持ったポジションだということです。

いや、でも点数とかどうでもいい。他の罰はないのか。と思って調べると……

  • 他の生徒に罰として居残りを命じることができる

違う、違うんだJ.K.R. 私が求めているのはそんな罰の権限じゃない。あの見た目の学校で、しかも杖まで常に持ってるのに……

本編の描写として出さなくてもいい。ただ、設定だけでも夢を見させてほしいんだ、うわーん

吉川

魔法界も教育に関する啓蒙が進んでいるとみた

まあ、20世紀半ばくらいまでは、魔法学校といえど体罰はあったでしょう。決まってるじゃないですか、何を言ってるんですか英国ですよ。異論は認めません。

(そもそもイングランドの学校で体罰が違法になったのは1998年。家庭内体罰は2022年においても違法とされていない)

明治期に英国留学した日本人による仕置きの記述

さて、ファンタジーフィクションもいいのですが、ちょっとだけリアリティを乗っけておきたいところです。

約100年前の1910年代に、ケンブリッジのパブリックスクールである「リーススクール」に6年間通い、その後ケンブリッジ大学に進学した日本人の著書があります。

吉川

パブリックスクールってのは、イギリスの私立の名門学校のことで、多くが寄宿制の学校(ボーディングスクール)です。パブリックっていうから「公立」みたいに感じるけど、名と伝統ある私立学校を指します

和泉

すんごいどうでもいいこと言っていいですか? 寄宿学校って「通う」っていうんですか? 学校に住み込んでるのに

今日では鞭は単に懲罰の象徴であって、往時の如く実際に使用されることは稀である。もっとも、旧式な学校では今日でも校長や教師が鞭を使うらしいが、この風も徐々に廃れてきている。ただ、きわめて微罪の場合、寝室でプリーフェクトにスリッパーでお尻をたたかれることなどもあるが、これはむしろお愛嬌といってよく真面目にとれば野暮であろう。

『自由と規律 – イギリスの学校生活 -』 (1949) 池田潔、岩波書店

ちょっと載せるかも迷ったのですが、こんなのは「お愛嬌」だと評しているので、引っ張ってきました。

七峰

ここでのスリッパは、鞭(ケイン)とは違った非公式な体罰用具として使われていますね。

スリッパリングに関しては、下記ページもどうぞ

ちなみにですが、

もしかしたら、パブリックスクールを舞台にした『チップス先生さようなら』(“Goodbye, Mr. Chips”) という小説をご存じの方もいるかもしれません。管理人は中学か高校で読まされました(曖昧)。その作者であるジェームズ・ヒルトンもこの上記のリーススクール出身です。

映画版『チップス先生さようなら』(1939) でもケインを使ったお尻叩き(six of the best)のシーンがありますね。影だけですが、チップス先生が部屋の本棚にかかっているケインを取るシーンは、なかなかです。

だって、当然のように本棚に鞭かかってるんですよ?

和泉

普通に怖いですよ。ケインはインテリアですか?

パブリックスクールの雰囲気を知りたい方は、ぜひ。

罰の執行も信頼関係?

さてさて、プリフェクトはそんな感じで、ある程度の権力を持っているようです。そうすると、やはりなんだか偉そうな態度のイメージがついて回りそうな気がします。

しかし、そこはいいとこの学校の最優秀生徒です。人格が優秀な人間が校長によってえらばれているわけです。(これが生徒内の選挙だと、人気や政治に左右されますね)

小さな問題であれば、教師を巻き込まずプリフェクトの仲裁で事をおさめる。当事者の片方がプリフェクトの友人でも、それだけで有利な判定を下さない。そういう人望と信頼関係があってこそ成り立つ、生徒自治制度です。

ここでの体罰は、痛みで相手を支配し治安を維持するツールというよりは、過ちを犯した仲間が状況を清算して再度迎え入れるための、一種の手続きなんでしょう。


七峰

はい集合!
今回は珍しく4人とも出てるね?

和泉

な、なんでしょう

七峰

このページのアイキャッチ! 内容がプリフェクトについてなのに、カーが先生!

やらかしましたね。これはやらかしましたね。背景までわざわざ描いていて、この体たらく! 準備したの、かえでさんですよね

和泉

わ、私はハリ〇タを記事内で使うっていうから、そのイラストを準備しただけです。このページは海外カテなんだから吉川さんが編集担当でしょう

吉川

企画会議で内容は皆に話してるじゃん。っていうか、発行責任者はちかさんでしょ。なんのためのポジションだよ。一般論として、ちかさんが確認しなかったのが悪い

七峰

わ、私は名ばかり管理職だから責任ないもん! バーカ バーカ

これは次の反省会が盛り上がりますね。久々に深紅の丘が8つ並びそうです!

ええ、ガチで間違えたパターンです。

目次