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マルティネってどんな鞭?
フランスの伝統的な小型鞭、マルティネ(Martinet)についてです。
マルティネという鞭をご存じでしょうか。
名前の響きがかわいくて、好きです
そもそもマルティネって何?
マルティネ(Martinet)はフランスで昔から子供のお仕置きに使われていた、マルチテール型(ばら型)の小型革鞭です。2、30 cmの木製グリップの先に、それと同じくらいの長さの短冊状の柔らかめの革を、10本ほど束ねた形をしています。
その革はそれぞれ違う色をして、素朴な可愛らしさを感じることも多く、お仕置き用具もおしゃれにしてしまうフランス人のセンスには、心から脱帽です。おそらく、何も知らない人が見たらなんだかわからないかと思います。
このマルティネ、威力の面では(鞭類としては)比較的暴力的ではなく、家庭や学校でのお手軽なお仕置きに適しているわけです。木製取っ手つきの革鞭と言うだけで、パドルやケインよりも取り回しやすそうだなあ、というのが想像に難くないかと思います。
そのため、服の上からお尻を叩いても、そこまで痛くなさそう…… お尻を出させる必要がありますね。
もちろん、物によりけりで、全体が大きく、革が重ければ威力は増します。しかし、やはりドイツやイギリスの子ども用鞭と比べると、平均的に小さめであるとは聞いたことがあります。
マルティネは素朴な意味での「かわいい」お仕置き道具であってほしいところです。
マルティネの歴史
そんなマルティネですが、実ははじめはお尻叩きの道具ではありませんでした。
というより、鞭でさえありませんでした。
マルティネの起源は19世紀に遡ります。フランスのそのカッコいいな軍服は有名ですが、野外で行動するとどうしても土や砂などが付きき、汚れてしまう。といっても、がっちりした生地の軍服には、羽箒など役に立たない。
このままではフランス軍がおしゃれではなくなってしまう……
さ、さすがフランス人。軍隊でしょ…?
365日スーツのキミからしたら異次元の思考だね
と、自らのアイデンティティが侵されかけたフランス軍が軍服の手入れのために携帯し始めたのが、革製のはたき、つまりマルティネであると言われています。軍服の土埃を払うのには適当な品ですね。
しかしながら、上官は気付いてしまいます。「これ、規律違反の兵士のケツをひっぱたくのに最適じゃいてきじゃないか? 常に持ち歩いてるし」と。
軍隊から民間に広まったマルティネは、その圧倒的な手軽さから、一気に子供たちのお尻の友となっていくのです。
広まったマルティネ
親御さんの支持を得ることに成功したマルティネは市販品として広く販売されることになります。
こちらのフランスの昔の映像では、店の棚や天井にたくさんのマルティネがかけられているのを見ることができます。
フランス国内で子供への体罰が(法的に)禁止された後、お仕置き道具としてのマルティネの役割は、公的に終えることになりました。
体罰が違法なのだから、マルティネの販売はできません。
そこで、マルティネたちはこの世から姿を消——さずに、ペットコーナーに陳列されることになりました。ネコをじゃらすためにもってこいですね。というわけで、世の親御様方は違う販売場所に買いに行かなくてはならないという手間をかけることになりました。
ペットを飼っていない人も、マルティネを買い求めることがあったようです。不思議ですね。きっとペット禁止のアパートで、ネコを想像して楽しむために買って帰ったのでしょう。